督脈温灸法で高齢者の腰痛と尿失禁が改善

高齢になると腰痛や尿失禁が起こりやすくなりますが、命門と大椎に同時に温灸をする督脈温灸法で改善することができます。第50回全日本鍼灸学会学術大会で発表した症例、「督脈温灸法による高齢者の腰痛および尿失禁の改善」を紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

1999年1月から2000年10月まで牧老人施設に入院中の高齢者で腰痛と尿失禁を主訴とする18名の患者に週に3回、1回30分の温灸治療を行いました。12名には督脈温灸法を、6名には痛みのある所に棒灸を行い、比較検討を行いました。

10カ月後、督脈温灸法と局所棒灸の両方の被験者全員に腰痛の改善がみられました。しかし、尿失禁に対して督脈温灸法は効果が見られたのに対し、局所棒灸治療は効果が見られませんでした。尿失禁が「1週間に7回以下」だった2人の患者さんは督脈温灸法後、「1週間に尿失禁はなし」になり、睡眠や精神状態も改善しました。

命門は腰痛のツボです。督脈温灸法は命門に温灸をしますし、痛みのある所を温める局所棒灸は腰にある命門を温めますのでどちらも腰痛が改善します。

また、命門は腎の陽を強くするツボで、東洋医学では腎の陽が弱くなると頻尿や尿失禁になると考えることから、命門のお灸は尿失禁に効くとされています。では、どうして尿失禁に対して督脈温灸法は効果がみられたのに局所棒灸治療では効果がみられなかったのでしょうか。

督脈温灸法の特徴は、命門に加えて大椎にもお灸をすることです。命門と大椎の二つに温灸をすると督脈を単に温めるだけではなく、督脈を通じさせて強くすることができます。命門だけをパワーアップさせるのではなく督脈を強くする、ここがポイントです。

東洋医学では「腎は水の下源、肺は水の上源」という言葉があり、腎と肺の二つで水を出していると考えます。腎は尿、肺は汗と関係が深いです。夏は汗をかくので尿が少なくなりますが、寒くなると汗をかかないので尿の量が増えます。このように肺と腎は協力して水を出しています。

督脈が強くなると肺と腎の両方が強くなるので水を出す働きが活性化され、結果、尿のトラブルが改善されます。のみならず、陽の大動脈である督脈が強くなれば体全体の機能が底上げされます。症例では睡眠や精神状態が改善されましたが、冷え症にもよいです。

邵氏温灸器にはベルトを着けることができますので、背中のツボでもご自身で温灸をすることができます。モグサは煙がほとんど出ないように炭化させていますので、ご自宅でも使用できます。副作用がなく、リラックスできることも温灸のよいところです。腰痛や尿失禁でなくても督脈を強くすることは日々の養生におすすめです。ぜひ督脈温灸法を試してみてください。

<参照>
■邵輝・森川和宥、「O-97 督脈温灸法による高齢者の腰痛および尿失禁の改善」、全日本鍼灸学会雑誌 第51巻3号、2001年5月、

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