NIPTは諸刃の剣

2013年から日本でも行うことができるようになった新型出生前診断(NIPT)は、妊婦さんの血液検査だけで胎児の染色体異常の有無を調べることができ、流産のリスクがないこと、妊娠10週以降の早い時期から検査ができることが利点です。ただし、確定検査ではないため、検査結果が「陽性」、または「判定保留」の場合は羊水検査か絨毛検査を受ける必要があります。

日本ではNIPTはあくまで個人の妊婦さんの希望に基づいて行われるものであり、検出対象は13、18、21 トリソミーとされています。一方、英国や米国では全ての妊婦さんに出生前診断の情報提供を行い、米国ではすべての染色体の数的異常や7 Mb 以上の部分欠失・重複の同定が可能な検査方法が用いられています。

高齢妊婦の増加という現状において、血液検査だけで行えるNIPTへの関心は一層高まっていくと思いますが、メリットとその限界について知っておく必要があります。

絶対に受けたくない無駄な医療』には以下の記述があります。

米国母子学会は「特にリスクがない場合、中絶するかどうかを決めるためにNIPTを実施してはならない」と求めている。NIPTは、妊婦の年齢が35歳を超えている、類似の血液検査やクアトロ検査、超音波検査で染色体異常が疑われている、前回の出産で染色体異常のある子を産んでいるといったリスクがある場合で、単体妊娠の場合に限って実施するものとされている。

(途中略)

陽性の結果が出た時には、中絶の決断をする前にさらに検査をすべきである。NIPTを行うならば、検査前のカウンセリングも重要と学会は説明する。メリットとその限界について知っておかなければならない。
※室井一辰、『絶対に受けたくない無駄な医療』、日経BP社 P167より引用

米国母子学会がNIPT実施に対してこういう言及をしているのは、NIPTが単純な血液検査ではなく、胎児情報が場合によっては胎児の生を制限する理由になるという倫理的問題を抱えているからです。

NIPTは採血だけで行えるので非常に簡単に思えますが、NIPTという検査がどういう性格のものなのか、メリットとデメリット、限界、結果の捉え方をわかっておかないと、受けた後に妊婦さんは大きな混乱に陥る可能性があり、遺伝カウンセリングが非常に重要であると思います。

今後はどこまで検査を認めるのか、どういう体制で行っていくのかが大きな議題の一つとなっていくと思います。出生前診断を必要とする妊婦さんが検査を受ける機会を制限されないためにも、検査に伴う矛盾や問題点と向き合い続ける姿勢が必要であると思います。

<参照>
■室井一辰、『絶対に受けたくない無駄な医療』、日経BP社

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