【BOOK】『絶望名言』

「絶え間のない悲しみ、ただもう悲しみの連続」

「明けない夜もある」

「無能、あらゆる点で、しかも完璧に」

タイトルもどうかしていれば表紙からいきなり、という感じですが、きっとこの本が必要な方がおられるのではないかと思い、ご紹介します。

著者の頭木弘樹さんは「絶望名言」についてこう説明しています。

時には、すばらしい言葉はちょっとまぶしすぎることもあります。たとえば、どう頑張っても夢がかなわなかった時に「あきらめずにいれば夢はかなう」という言葉はやっぱりちょっと辛いですし、辛いことが起きた時に「明るい気持ちでいれば、幸せなことしか起きない」と言われても、それはもうちょっと自分には遠い言葉ですよね。辛い時には、絶望的な言葉のほうが心にしみて、逆に救いになる時があるんじゃないかなと思うんです。そういう言葉のことを「絶望名言」というふうに呼ばせていただいています。
※『絶望名言』p22から一部引用

頭木さんは20歳の頃に潰瘍性大腸炎になり、数カ月単位の入院と自宅療養を繰り返しました。「どうして自分だけが、こんなに苦しまなきゃいけないのか」という受け入れがたい気持ちがあったそうです。

この本はNHKラジオ深夜便の『絶望名言』というコーナーの書籍化で、番組ではカフカ、ドストエフスキー、ゲーテ、太宰治など文学作品の中から絶望に寄り添う言葉を紹介し、頭木さんがいつ、どんな気持ちで読んでいたかが語られていきます。個人的な話のはずなのに、いろいろなことを思い起こさせ、言葉自体は身も蓋もなくネガティブであるのに笑ってしまうところもあります。

頭木さんは文学についてこう言います。

文学を読むと、本当に暗い心とか辛い心とか、とことんまで描いてあるじゃないですか。普通に生活していると、会話でそこまで心のうちを見せる人っていませんし、やっぱり辛いことは見せないようにしていることが多いですからね。

世の中に普通に語られることって、成功体験が多いじゃないですか。苦労話もありますけれど、結局、乗り越えた人の話なんですよね。乗り越えなかった人の話って、なかなか出て来ないじゃないですか。だけど文学だけは、そういう話を書いてくれるわけですよね。

そうすると、苦しい時にそれを読むと、自分だけじゃないっていう思いにもなるし、共感もできるし。それは非常に救いでしたね。

※『絶望名言』p167から一部引用

経験を重ねたからこそしみじみわかる一冊であると思います。

<参照>
■頭木弘樹、『NHKラジオ深夜便 絶望名言』、飛鳥新社

■Photo by Alexandro David from Pexels

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