性病は感染症の一つにすぎない

不妊治療を始める前に基本的な検査を行いますが、その中にクラミジアなどの性感染症検査があります。性病は感染症の一つにすぎず、性的に乱れているわけでもタブー視されることでもありません。感染症の一つとして淡々と治療すればよいだけです。しかし、感染がわかるとショックを受けられる方が多いです。

札幌厚生病院病理診断科医長の市原真先生が著書、『Dr. ヤンデルの病院選び 〜ヤムリエの作法〜』の「病院通いは恥なのか 性病、ナイーブな部位の病気で病院にかかるということ」でよい指摘をされていますので、一部引用しながらご紹介します。

市原先生は「性病は非常にありふれた病気です」と言いますが、どれくらいありふれているかというと、インフルエンザ並みです。

「妊婦検診」の結果によると、妊婦さんの3~5%にはクラミジアの病原体が認められます。また、各自治体の保健所による定点観測では10~20代女性の10~15名に1名が何らかの性感染症にかかっているとされます。(学校の1クラスが35名と仮定すると)クラスの3名以上です。しかもこれは、症状が出て病院にかかった女性の率であり、無症状で性病に感染し続けている人の数は考慮されていません。本当に感染率が高い病気です。クラスに3~4名となるとインフルエンザ並みじゃないですか。
『Dr.ヤンデルの病院選び』p179より一部要約して引用

ですから、市原先生は強調します。

これだけ感染率が高いと、ごく平均的な交際関係・性交渉で感染しても何の不思議もないのです。
『Dr.ヤンデルの病院選び』p180より一部要約して引用

性感染症は一般的な病気であるのに、患者さんは病気としての苦しみに加えて偏見の目にもさらされます。そのことが病気の発見や治療を一層遅らせてしまいます。

自覚症状がほとんどないため重症化するまで感染に気が付かないことも多いことを考えれば、不妊治療の検査で陽性がわかり、治療を始めることができるのはむしろよいことだと思います。

市原先生は言います。

恥ずかしい病気なんて本当のところありません。病院通いが恥ずかしいと思う必要はないです。少なくとも主治医や医療スタッフは、あなたのことを「恥ずかしい人だ」なんて、まったく思っていません。乱暴な言い方をすれば、「いち症例」としか思っていません。
『Dr.ヤンデルの病院選び』p193より一部要約して引用

性感染症は放っておくと不妊につながります。妊活を考えておられるのであれば、早めに男女ともに基本的な検査を受けられることをお勧めします。

<参照>
■市原真、『Dr. ヤンデルの病院選び 〜ヤムリエの作法〜』、丸善出版

■Photo by Pietro Jeng from Pexels

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