【BOOK】『世にも危険な医療の世界史』

世にも危険な医療の世界史』、その書名に違わず、よくこの治療をして治ったな、というより死ななかったなと感心するほどの話が満載ですが、不妊治療も歴史に名を残す名医がぞっとするような話を残しています。

例えば、ヒポクラテスは不妊検査にニンニクを使います。曰く、「口と膣との間には連絡経路があり、この経路の通りの良さから繁殖力を判断できる」とのことなので、女性器の近くにニンニクを擦り込み、息がニンニク臭くなれば通りがよくて妊娠しやすいということになります。

そして、不妊の対処法をこう提案しています。

「子宮頸部がしっかりと閉じている場合は、赤い硝石、クミン、樹脂、はちみつを入れた特別な混合物を使って、開口部をこじ開けて精子を通りやすくしなければならない」

著者によると、この「赤い硝石」は硝酸カリウムかソーダ灰、ナトロンであると考えられるそうです。

ガイウス・プリニウス・セクンドゥス、今も読み継がれる自然誌事典『博物誌』を著し、大プリニウスの名で知られる彼の安産のアドバイスは「妊婦の体の上にハイエナの右足を置く(決して死を招くと考えられていた左足ではなく)」「ガチョウの精液を飲む」「イタチの子宮から流れ出る粘液を飲む」ことでした。

出産の痛みを和らげるには「雌豚の糞を粉末にしたものを飲む」とよく、生まれ落ちる胎児を犬の胎盤で受け止めるとよいとも勧めています。準備がとても大変そうです。

今だからこそ「そんなバカな」と笑えますが、先人が多くを試して経験を積んできてくれたからこそ今の医療があると思います。今、妊婦の体の上にハイエナの右足を置くことはありませんが、東洋医学では何千年も前から続く治療法や養生法があり、今も使われています。長い時間の中で淘汰されなかったということが、人々が「効果がある」と思っていることを物語っています。

生活の中で健康を守っていくために東洋医学が役に立つことがたくさんあります。これからも積極的に情報を発信していきたいと思います。

<参照>
■リディア・ケイン、ネイト・ピーダーセン、『世にも危険な医療の世界史』、文藝春秋

■Photo by Artem Maltsev on Unsplash

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする