『データで読み解く「生涯独身」社会 』の著者、天野馨南子さんは、「日本では結婚せずに出産することは非常に少ないため、未婚者が増えたことが日本の出生率の低下の大きな原因である」と言います。
一般的に「常識」と思われていることが、データから見ると全く当てはまらないということは往々にしてありますが、本書では「よくある誤解」として、このような例が挙げられています。
●長期不況で雇用が悪化したせいで、未婚化が進んでしまった。
●高学歴化した女性が男性をえり好みするようになり、結婚しにくくなった。
●バリバリ働く女性が増え、専業主婦が減ったことが少子化につながった。
『データで読み解く「生涯独身」社会』では「それが普通でしょう」と思われていることがどれほど普通でないかをビッグデータ、オープンデータを用いてデータ分析結果で示しています。その結果たるや、驚きの連続です。ちなみに、冒頭で記した「日本の出生率の低下の大きな原因は未婚者が増えたことにある」ということもデータに裏付けられています。
おそらく一番大きな誤解はこれではないでしょうか。
「妻さえ若ければ、夫は年を取っていても子どもを授かれる」
ここにわざわざ書いたということは、結論は「そうではない」ということはおそらくおわかりだと思いますが、その理由が本書では、最近言われるようになった「精子も老化するから」ではないのです。
日本では婚外子比率が非常に低いため、子どもを授かるにはまず結婚があります。ですから「高齢男性は若い女性と結婚できるのか」、話はここから始まります。そして、「男性の結婚年齢と出生率の間には本当に関係がないのか」「男性の精子は毎日新しく作られてフレッシュなのだから高齢でも支障はないはずなのに、統計的には男性の方が高齢な結婚ほど少子化になるのはどうしてなのか」がデータで裏付けられていきます。
「思い込み」をデータで確認していく過程は目からウロコの連続です。それでも、「お互いを長く連れ添うパートナーとして考えるからこそ結婚する」というそもそもの所から考えると、ごく当然のことをデータは示していることがわかります。
そして、著者はこう言います。
分析結果からは、子どもが欲しいというのであれば、むしろ男性の方が年齢を気にするべき立場であるともいえます。女性だけに若さを求めるのではなく、まずは男性が自身の結婚を早めることが必要です。
個人の希望や自分の知る数少ない事例で全体を語ることがどれほどリアルからかけ離れているかをページをめくるごとに思い知らされる一冊です。
<参照>
■天野馨南子、データで読み解く「生涯独身」社会、宝島社新書
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