【BOOK】『いろはに食養生』 食材の知識を和歌で伝える

江戸時代の初期に書かれ、日常的に用いる食物の効能や食べ方を和歌の形式で詠んだ『和歌食物本草』という本があります。親しみやすく、覚えやすい和歌で食の知識を伝えていたわけですが、ごく普通の人々が食材に関してとても深い知識を持っていたことに驚かされます。

いろはに食養生―薬膳で読み解く江戸の健康知恵袋』は『和歌食物本草』から現在、日常的に食べられている63品目をまとめています。しかも、巻末には食材の五十音索引まであります。食養生に関心のある方には一読の価値がありますし、話の枕に、コラムのネタに、使えること間違いなしの一冊です。

例えば、カニはこのように詠まれています。

蟹はよく
血の滞り
破るなり
産後に食し
目こそ麻痺ぬれ

武さんの現代語訳にはこうあります。

蟹は血液の滞りを除いてくれる。
出産後に食べるとめまいが起きる。

カニは寒性なので食べ過ぎると体調不良を起こしますが、特に産後は体を冷やすとよくないので注意をするようにという意味です。上海蟹のタレの定番は生姜醤油ですが、体を冷やすカニを食べる時は体をあたためるショウガを一緒に食べるのも、カニは体を冷やすという理由から来ています。

食材の詳細については本書を参照頂くことにして、著者の武鈴子さんの序文をぜひ紹介させてください。

日本の食は、ここ30年で激変しました。一年を通して同じ食材が店頭に並び、日本にいながら世界各国の料理が味わえます。生産者と消費者のつながりも失われ、私たちが口にするものが、どのようにして作られるのか、実感を持って理解することができなくなりました。食べ物ではなく、もはや工業製品と同じです。

しかし、私たちの体は、すべて食べ物によって育まれています。髪の毛の一本一本も、皮膚や爪を作るのもすべて、毎日口にしている食べ物です。いま一度、食べ物が体の薬であるということを認識しなければならないと思います。私たちの心と体を育む食。そこに気づくことが真の食育ではないかと私は思います。

食は健康を守る術であることに改めて気づかされる一冊です。

<参照>
■武鈴子、『いろはに食養生―薬膳で読み解く江戸の健康知恵袋』、家の光協会

■Photo by ガイム

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