コロナ感染拡大を遅らせる手段としてのマスク着用


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新型コロナウイルス感染拡大予防のためにエチケットとして浸透した感があるマスク着用ですが、同志社大の中谷内一也教授の調査によると、日本人がマスクを着ける動機は「みんなが着けているから」が断トツでした。しかし、マスク着用は「症状がなくても陽性の可能性があり、他の人に感染させないため」ということを今一度認識させてくれた事例があります。

米国ミズーリ州で美容師2人が呼吸器症状発生後も陽性の結果が出るまで仕事を続けていたことを受けて、保健当局は接触者を追跡し、顧客計139人を特定しました。幸い、うち67人は検査で陰性が判明し、残りも全員2週間の経過観察が行われましたが症状を報告した人はいませんでした。

接客の際に、美容師の一人は二重ガーゼマスクを、もう一人は二重ガーゼマスクか不織布マスクを着用していました。そして、顧客も大部分がガーゼマスクか不織布マスクを着用していました。

米疾病対策センター(CDC)はこの事例を「新型ウイルスの感染拡大を遅らせる手段として社会全体でマスクなどで顔を覆うことの重要性が強調される実例」と述べ、「政策として広範に採用することが検討されるべきである」と発表しています。

理化学研究所もスーパーコンピューター、富岳でマスクによる飛沫の拡散防止効果などを計算し、性能の低い布マスクでも約8割の飛沫を防ぐことができ、新型コロナウイルスの対策に有効だと発表しています。

感染拡大予防にはマスクだけでなく、人との距離を取ることやこまめな手洗い、充分な休養など総合的な対応が必要ですが、マスクは決して「みなが着けているから仕方なく着ける」ものではないと思います。

【参照】
マスクが美容院でのコロナ感染拡大を防ぐ 米CDC報告、AFP BB News、2020年7月15日
■中谷内一也、マスク着用は感染防止よりも同調のため!?(論文タイトル:Why do Japanese people use masks against COVID-19,even though masks are unlikely to offer protection from infection?)、2020/08/04
布マスクでも拡散防止効果、スパコン「富岳」で計算、日本経済新聞、2020/8/24