有機農産物は体内の農薬を大幅に減らす


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NPO のCommonweal Instituteや国際環境保護団体、Friends of the Earthの科学者からなる研究グループが有機食品を食べると体内に残留する農薬の量が大幅に減ると学術誌『Environmental Research』に発表しました。

米国各地に住む4家族、子どもを含む16人に、まず普段の食事を5日間続け、6日目から6日間、3食を有機栽培のみの食事に切り替え、毎日、尿中のグリホサートを分析しました。普段の食事をしている間は、全員からグリホサートが検出され、尿の全サンプルの約94%からグリホサートが検出されました。ところが、有機栽培のみの食事に切り替えた後は、グリホサートの尿中濃度が平均71%減少しました。興味深いのは食事を有機に切り替えてわずか2日後に濃度が大きく低下したということです。体内の農薬量を早く、大幅に減らすために食事を有機にすることは有効であると言えます。

日本における有機農産物の定義は、「周辺から使用禁止資材が飛来し又は流入しないように必要な措置を講じている」「播種又は植付け前2年以上化学肥料や化学合成農薬を使用しない」「組換えDNA技術の利用や放射線照射を行わない」など、有機農産物の日本農林規格に従って生産された農産物のことです。日本でも有機農産物の需要は拡大の流れにありますが、国内で有機農業に取り組む耕地面積は全体の0.5%にすぎません。新規就農希望者には有機農業を志す方が多いですが、「販路がない」「手間に対する収穫が不安定」という理由で生産をあきらめる農家も少なくありません。

しかし、農薬には健康に悪影響を与えることを示唆する報告が複数あり、生産者、流通者、消費者、環境のいずれにおいてもできるだけ減らすべきだと思います。農水省は有機農業を推進するために前年度の1.5倍の予算をつけ、有機農産物を学校給食に導入するための支援を始めます。給食を教材として食育を行っている学校も多くあり、食の安全への関心がこれを機に高まることを期待します。

<参照>
■Meg Wilcox, Organic diets quickly reduce the amount of glyphosate in people’s bodies, Environmental Health News, Aug 11, 2020
■John Fagana et al., Organic diet intervention significantly reduces urinary glyphosate levels in U.S. children and adults, Environmental Research Volume 189, October 2020, 109898, https://doi.org/10.1016/j.envres.2020.109898
学給に有機農産物 農業の未来開く端緒に、日本農業新聞、2020年09月22日
【有機農業関連情報】トップ ~有機農業とは~、農林水産省