【BOOK】『最強の野菜スープ』

Illustrated by 香月

連日、ノーベル賞受賞者が発表されていますが、米国の情報会社がノーベル化学賞の有力候補に選んだがん研究の第一人者である前田浩熊本大学名誉教授の著書、『最強の野菜スープ』を興味深く読ませていただきました。

前田先生は抗がん剤の研究をされていますが、「がんは予防が一番大切です」と言われ、一番いい方法として野菜スープを勧めておられます。

私たちは日々、活性酸素にさらされていますが、抗酸化物質を多く含む野菜を食べることでその影響を減らすことができます。そして前田先生は野菜はサラダで食べるよりも断然、野菜スープの方を勧めています。なぜかというと、実験の結果、サラダより野菜スープの方が抗酸化力が10倍から100倍も強いことがわかったからです。

野菜に含まれる抗酸化物質の代表格はファイトケミカルです。ファイトケミカルは植物が紫外線や害虫などから自らを防衛するために作り出す物質の総称で、植物の色素や香り、苦みなどを構成している成分です。ファイトケミカルの多くはセルロースの細胞壁に包まれている細胞内にあります。人間の体内ではセルロースを消化できないので、野菜を噛んだり、包丁で刻んだりした程度では細胞内のファイトケミカルを吸収できません。ところが、野菜をゆでるだけで細胞壁は簡単に壊れ、ファイトケミカルだけでなく、ビタミンやミネラルなどもスープに溶け出します。
(以上、『最強の野菜スープ』より要約引用)

「加熱するとビタミンCが壊れる」と一般に思われていますが、前田先生は「加熱するとビタミンCが壊れるというのはあくまでビタミンCを単体で熱した場合で、野菜の加熱調理ではビタミンCが壊れる心配はほとんどない」と言います。野菜を加熱してもビタミンCが失われない理由について、前田先生はこう言います。「野菜に含まれる他の様々な抗酸化物質の働きでビタミンCが安定して分解されにくくなるからです。また、ビタミンCも他の成分の酸化を抑えて安定させます」。

他にも『最強の野菜スープ』には野菜に含まれる抗酸化物質がわかりやすくまとめられており、「インフルエンザウイルスが消えたのに、マウスはなぜ死んだのか」「鉄分の過剰摂取は避けよう」などコラムもおもしろいです。薬膳や健康相談で冷え対策に野菜スープをすすめている先生方は多くおられますが、これを読むと一層、自信をもってすすめることができるのではないかと思います。

<参照>

■前田浩、『最強の野菜スープ』、マキノ出版