産後うつへの画期的な取り組み「長野モデル」

Illustrated by ゆうなりこ

国立成育医療研究センターなどの調査結果によると、2015年から16年までの2年間に妊娠中もしくは産後1年未満の女性が自殺した数は102人に上ります。産後うつへの対応が求められるなか、その取り組みのひとつとして「長野モデル」が注目されています。

長野モデルは国立成育医療研究センターの厚生労働科学研究班グループが長野市と協働して開発した妊産婦の自殺予防のための地域母子保健システムです。新生児訪問時に保健師がエジンバラ産後うつ病質問票を用いて全ての母親に自殺念慮の評価を行い、自殺念慮が認められた際には保健師・精神科医・産科医・助産師・看護師・小児科医・医療ソーシャルワーカーなど多職種のチームでフォローアップを行います。早期の、そして多職種が連携して介入することがポイントです。

『BMC Psychiatry』に掲載された論文によると、長野モデルを適応することで産後のメンタルヘルスを向上させる効果が明らかになり、その効果は産後7〜8カ月時まで持続しました。また、長野モデルは現在の母子保健システムを応用すれば導入が可能なので、新たな資源や資金が必要ないということも利点です。

悩みや不安を打ち明けることで、お母さんたちの気持ちはらくになります。米国カリフォルニア州は、周産期うつ病を早期に発見するために産科が定期的にメンタルヘルス検査を行うことを義務づける新しい法案を制定しています。ドイツではヘバメと呼ばれる産後ケアを行う助産師がメンタルヘルスを定期的にチェックしており、費用は保険でカバーされます。このように、世界各地で産後うつに社会として取り組む活動があります。

長野モデルでは多職種が問題解決のために介入するので、ただ話を聞くにとどまらず、問題を具体的に解決することが可能なのでお母さんの重荷を少しでも減らしていく目途がつきます。不安を打ち明けられる場があり、解決への道筋があることに力づけられる方はきっと少なくないと思います。

<参照>
■Yoshiyuki Tachibana et al., An integrated community mental healthcare program to reduce suicidal ideation and improve maternal mental health during the postnatal period: the findings from the Nagano trial, BMC Psychiatry, 2020 Jul 29;20(1):389. doi: 10.1186/s12888-020-02765-z.
世界初!産後の自殺予防対策プログラム「長野モデル」を開発 ~産後の母親への自殺予防効果が証明される~、国立成育医療研究センター

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