後ろ宙返りをしながら薬を届けるマイクロロボット

1セント硬貨の「United States」の「U」の右側に見えるのがパデュー大学によって開発されたマイクロロボット (Purdue University image/Georges Adam)

ドラッグ・デリバリー・システム(DDS)は、必要な薬物を必要な時間に必要な部位で作用させるためのシステムです。薬を患部に直接作用させる事ができるため効果がより期待でき、副作用を低減することで患者の負担が減り、社会復帰が早まります。プロドラッグや徐放製剤、ナノバイオテクノロジーなどいろいろな方法が検討されていますが、米国のパデュー大学は腸内の患部に直接薬を届けるマイクロロボットを開発したと発表しました。

ユニークなのはその動きで、体外から磁力で誘導されたマイクロロボットは後ろ宙返りをしながら腸を流れとは逆に進みます。

超音波画像に映る生体内結腸をバク転しながら進むマイクロロボット (Purdue University video/Elizabeth Niedert and Chenghao Bi)

研究チームはマイクロロボットをヒトの体内の目標地点に誘導し、そこにとどまらせて薬をゆっくりと放出させることができると見込んでおり、麻酔をかけたマウスとヒトと似た腸を持つブタを使用した動物実験で有効であったことを確認しています。マイクロロボットはポリマーコーティングされているので、目標地点に着く前に薬剤が落ちることはないそうです。

マイクロロボットは安価に製造でき、無害で生体適合性があることも利点です。研究チームはさらに、マイクロロボットを診断ツールとして使用することも視野に入れています。そうなれば細胞を採取する際の患者の負担、そして医療側の手間も減らすことができます。

<参照>
All-terrain microrobot flips through a live colon, Purdue University, October 15, 2020