先天的不妊モデル動物の繁殖能力の回復に成功


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上野山賀久准教授らの研究グループは、先天的不妊モデル動物の繁殖能力を回復させ、弓状核キスペプチンニューロンが卵胞発育を司る繁殖中枢であることを証明する論文を米国科学アカデミー紀要 (PNAS)に発表しました。以下に要約して紹介します。

ヒトの不妊症に関する研究において、視床下部のキスペプチンが性腺刺激ホルモン放出ホルモンニューロンを刺激する最も重要な因子として発見され、繁殖機能の脳内メカニズムが明らかにされつつあります。

キスペプチンを合成、分泌するキスペプチンニューロンは、キスペプチンの他にニューロキニンBとダイノルフィンAを合成、分泌することから、それぞれの神経ペプチドの頭文字をとってKNDyニューロンとも呼ばれます。その細胞体はおもに視床下部弓状核と視床下部前方に位置する前腹側室周囲核と呼ばれる2つの脳領域に密集して存在しますが、今回の論文は、弓状核キスペプチンニューロンが性腺刺激ホルモン放出ホルモンのパルス状分泌を駆動させる中枢であることを明らかにしました。

今回の研究において、先天的不妊ラットのキスペプチンニューロンを強制的に復元し、キスぺプチンニューロンを2割以上復元できたラットは黄体形成ホルモンのパルス状分泌が回復し、排卵可能なサイズにまで卵胞を発育させることに成功しました。

また、繁殖機能が正常なラットにおいて9割以上のキスペプチンニューロンの機能を喪失させると、視床下部のもう一方のキスペプチンニューロンが残っていても性腺刺激ホルモン分泌不全となり、不妊となることがわかりました。

これらの結果から、弓状核キスペプチンニューロンが性腺刺激ホルモンのパルス状分泌を制御し、卵胞発育を司る繁殖中枢であることが証明されたと結論付けられています。ヒトの不妊症の約25%は視床下部の繁殖中枢の機能不全によると考えられており、不妊治療への応用が期待されます。

<参照>
先天的不妊モデル動物の繁殖能力の回復に成功ー卵胞発育を司る繁殖中枢ニューロンを同定ー、生理学研究所、2021年1月26日