知は力なり


Illustrated by ゆうなりこ

リクルートライフスタイルが2019年に行った「男性の妊活に関する意識・実態調査」によると、妊活に取り組んだ男性の約6割が自身の妊活に後悔があり、その約3割が「もっと早く始めていれば」「もっとできることを実施しておけば」と回答しています。

同社は男性が妊活に及び腰であることの原因の一つに「精子に関する正しい知識」の不足があると考え、「どれだけの人が正しい知識を持っているのか」「正しい知識を身に付けることでどんな態度の変化が起こるかを明らかにする」ために、2021年2月23日の「夫婦で妊活の日」を前に「精子に関する知識の実態把握調査」を実施し、その結果を発表しました。

興味深かったのは、精子に関する知識について最も驚いたことに約40%の人が「男性の4人に1人は精子の状態が悪く、自然妊娠が難しい可能性がある」と答えていたということです。これまで自分事とは思っていなかったが、実は意外に身近なことかもしれないと思われたのが、今回の「驚いた」という結果になって現れたのではないかと思います。「精子に関する知識」について知らないことに、約7割が「男性不妊の専門科は泌尿器科であること」と回答していることも「自分には関係ない」と思う気持ちが表れています。

「正しい知識を身に付けることでどんな態度の変化が起こるかを明らかにする」は本調査の目的のひとつですが、精子に関する知識を知ったことによる態度の変化が見られた人が最も多かった項目は「精子に良くないとされる生活習慣や状態の見直し」で、正しい知識を身につけることが行動するきっかけになることがわかりました。

子宝相談をしているととかく話が専門化していきがちですが、卵子の老化も専門家の間では常識でも一般に広まるまでにはかなり時間がかかりました。今回の調査で、ストレスや喫煙が精子によくない影響を及ぼすということは多くの方が知っていましたが、「一部の成分が含まれる育毛剤の使用」「サウナの利用」「膝上でのPC作業」が精子によくない生活習慣であることは8割以上が「知らない」と回答しています。

実際に子どもを持つことを考える際に、知識があれば時間や精神的な負担を大きく減らせます。「妊活を始めるまでそんなことは知らなかった」ということが少しでも減らせるように、広く情報を発信していくことは、不妊治療に携わる者にとって長期的な視点で大切なことだと思います。

<参照>
■リクルートライフスタイル、『男性の妊活に関する意識・実態調査』、2019/10/04
■リクルートライフスタイル、『「夫婦で妊活の日」を前に、男女の「精子に関する知識の実態把握調査」を実施』、2021/02/17