出生前検査の情報を全妊婦に提供するよう国が方針を転換


Illustrated by ゆうなりこ

厚生労働省に設置されたNIPT等の出生前検査に関する専門委員会で、新型出生前検査(NIPT)の実施検査機関について国が施設認証の在り方も含めて関与していくこと、また、妊娠初期段階のすべての妊婦に対し情報提供するということがおおむね認められ、出生前検査について、これまでの「積極的に知らせる必要はない」から「全ての妊婦を対象に情報提供をする」へと方針を転換することが報道されました。

情報提供について、各自治体の母子保健窓口や産婦人科で、妊娠初期のすべての妊婦に出生前検査についてリーフレットが配布されます。検査を受ける際には、障害を持つ子どもの育て方などの情報・サポート体制などについて、検査を受ける妊婦とその家族に対し、医療機関で対面で説明されることが検討されています。

NIPTは採血だけで調べることができるので、検査を希望する妊婦さんが増えていますが、NIPT 実施認定施設の地域的偏在や施設の受け入れ能力を超えているため、無認定施設でNIPTを受ける妊婦さんが増加していることが問題視されていました。

日本産科婦人科学会が2019年6月に決定していた新指針について、厚生労働省母子保健課から「国においてもNIPTに関する審議会を設置し必要な議論を行うので、実施についてはその議論を踏まえて対応されたい」との要望書を受け、その運用は保留になっていましたが、国の方針がようやく定まったことになります。

ただ、日本産科婦人科学会が指摘しているように、NIPTは簡便に実施できるがゆえに、その意義や結果の解釈について妊婦さんが充分理解しないまま検査が行われ、検査結果について冷静に判断できなくなることが懸念されます。

これまでは「特別」な検査であった出生前検査ですが、今後は「全ての妊婦を対象に情報提供をする」となることで、子宝カウンセリングにおいても避けられない大きな論点のひとつになっていくと思います。

<参照>
出生前検査、全妊婦に周知へ…厚労省が20年ぶり方針転換、読売新聞、2021年03月16
「出生前検査」全妊婦に周知へ “約20年ぶり”に方針を転換、FNNプライムオンライン、2021年3月17日
■公益社団法人日本産科婦人科学会倫理委員会、「母体血を用いた出生前遺伝学的検査(NIPT)に関する指針」
NIPT等の出生前検査に関する専門委員会、厚生労働省

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする