人工授精中でも夫婦生活を持つ方がよい


Illustrated by yurian

毎週水曜日に更新しているYouTubeプログラムの第5回、「人工授精中の夫婦生活について」において、精液には着床環境の免疫を整えるスイッチをオンにする働きがあることから、人工授精をしていても夫婦生活を持つ方がいいとお話ししました。

精液は液体成分の精漿と細胞成分の精子とで構成されます。まだ不明な点は多いですが、精漿の重要な生理作用のひとつに免疫抑制作用があります。日常的に口にする米や肉などの異物抗原に対しては免疫の排除機構が作動しませんが、生殖器官においても同様の免疫機構が働いています。

ブタ、ヒツジ、ラットなど種々の動物種において精液への暴露が胚の発育や着床を促進することが報告されており、ヒトにおいても「月経周期の 7、14、21 日目に性交を行い、その 12 時間後に精漿を入れたゼリー状カプセルを腟内投与することにより妊娠率が向上した」「IVF-ETにおいて胚移植周辺期に性交したグループでは、禁欲したグループと比較して移植胚当り着床率が有意に向上した」という報告があります。

これらも含めて生殖における精液の役割について複数の研究が行われています。ARTの現場では現在、精子にのみ大きな焦点が当てられていますが、今後は精漿の免疫修飾作用等についても検討が進むのではないかと思います。弘前大学の研究チームによる論文、「生殖における精漿の免疫修飾作用:review」に簡潔にまとめられていますので、ぜひご参照ください。

<参照>
■Shunsaku Fujii et al., 生殖における精漿の免疫修飾作用:review、弘前大学医学部産科婦人科学教室

■【妊活のための体づくり】人工授精中の夫婦生活について