胸の痛みにラッキョウ


Photo by cheetah

スーパーにラッキョウが出回る頃になりました。生ラッキョウはこの時期にしかお目にかかれないので、季節を感じる食材のひとつです。

もともとは薬用として渡来し、食用に転じたのは江戸後期と言われています。日本の民間療法では、ラッキョウは口内炎やのどの腫れにすりおろしたものを水で薄めてうがいをする、また、風邪の初期に刻んだラッキョウを入れた味噌汁を飲むと汗が出て熱が下がるというふうに使われています。疲労回復、食欲増進、健胃、整腸、殺菌、解毒、冷え性によいということでも知られています。

漢方ではラッキョウは薤白(がいはく)と言い、「胸痺の要薬」とされます。括樓薤白白酒湯(かろがいはくはくしゅとう)という処方が有名で、狭心症や心筋梗塞に用いられます。『食べるくすりの事典』には、血栓を溶かす作用があることが動物実験で確かめられており、ラッキョウ漬けを1日、3~4粒食べるだけでも胸の痛みや狭心症などの予防に役立つと書かれています。

立夏を過ぎ、心(しん)の季節である夏に入るのとあわせて「心」を助ける食材が旬を迎えるというのは絶妙な自然の摂理であると思います。ぜひ、旬のラッキョウをお楽しみください。

<参照>
■鈴木昶、『食べるくすりの事典』、東京堂出版