民間精子バンク立ち上げへ


Illustrated by やまびこ堂

民間の精子バンク、「みらい生命研究所」が1件あたり15万円で精子を提供する取り組みを始めることが報道されました。提供者は20~40歳までの治療に理解のある国内の医療関係者などに限定し、感染症の検査を行ったうえで精子を選択するとしています。

これまで、第三者から提供された精子を使って人工授精する不妊治療は日本産科婦人科学会の登録施設で行われてきましたが、近年は精子の提供者が減少し、SNSを介して個人間で精子が取り引きされるケースが急増しているとみられていました。この場合、安全性の問題が指摘されており、その点からみると、同バンクは大学は直接運営には携わらないものの、独協医大を運営する学校法人の関連会社が出資し、岡田弘独協医大特任教授が社長を務めるということで信頼性は担保されているといえます。

ただ、報道でも指摘されているように、精子の提供者が減少していることの大きな理由のひとつに、生まれた子どもの「出自を知る権利」を求める声が高まっていることがあります。

同バンクでは、提供者が「非匿名」か「匿名」を選択し、不妊夫婦がどちらかを選ぶということですが、生まれた子どもが遺伝上の親を知りたいと希望したときにどうするかについてはそれぞれのご家庭で事情が違うので明文化がむずかしく、課題は積み残されたままです。

<参照>
【独自】民間精子バンク、1件15万円で提供へ…提供者は「非匿名」か「匿名」を選択、読売新聞、2021年5月25日
国内初 精子バンク立ち上げへ 獨協医科大の医師ら、NHK、2021年5月25日