『東京人』特集 東洋医学のチカラ


Illustrated by  すずしろ

総合誌、『東京人』2021年7月号で「はじめて知る東洋医学のチカラ」を特集していたので手に取ってみましたが、質、量ともに読み応えのある特集でした。

対談やインタビュー記事に加えて、英国やウガンダなど世界の鍼灸事情を紹介するライトなページもありますが、曲直瀬道三や吉益東洞などを紹介する漢方の歴史の記事など資料としても使える一冊です。

専門誌ではない媒体で東洋医学が取り上げられると、改めて大切なことを思い出すことができます。作家の江上剛さんが漢方ドック体験記で問診についてこう書いています。

漢方医学は全体的な診断なので患者の生活状態全般に話題が拡がっていく。両親兄姉が癌で亡くなったことや、出かける際、鍵の閉め忘れが気になるなど、ついつい余計なことまで話し込んでしまった。

「こんなにじっくり話を聞いていただけると、それだけで体調が良くなる気がします」

私たちは誰かに話を聞いてもらいたくて仕方がない。聞いてもらうだけでいいのだが、誰も耳を傾けてくれない。

「問診」は診断ではなく患者の精神の「治療」なのだろう。

※江上剛、「漢方ドック体験記」、『東京人』2021年7月号より引用

東洋医学は患者さんの生命力を引き出すために、心も含めて体全体を診ます。とても手間のかかる、患者さんの力を信じていないとできないことであると思います。これに日々取り組んでおられる先生方に改めて敬意を表します。

<参照>
■『東京人 2021年7月号 特集「はじめて知る 東洋医学のチカラ」』、都市出版