心の不調と栄養素


Photo by るぱるぱ

2021年6月の子宝カウンセラーの会で、はなおかレディースクリニックの花岡正智先生は「妊娠中の鉄欠乏は産後うつ、不安、ストレス、認知機能と関係があると言われており、鉄の重要性が注目されている」と言われていましたが、近年、心の不調と栄養素との関連が注目されています。

鉄は世界的にも不足しやすい栄養素であるといわれており、特に女性は月経や妊娠、分娩、授乳などで鉄不足になりやすいです。

最近、鉄が不足するとうつ病リスクも高まることが指摘されています。
国立精神・神経医療研究センターの功刀浩先生は著書、『こころに効く精神栄養学』で「産後うつ病は出産前後の女性ホルモンの急激な変化が関与すると考えられているが、鉄不足と関連するというデータが増えている」として、アメリカとスペインの調査を紹介しています。

スペインの729人の妊婦の調査では、65人が産後32週までにうつ病を発症したが、出産48時間後の血清フェリチン値と産後うつ病の発症には強い関連が見られた。フェリチン値が低かった者(7.26㎍/ℓ未満)は、そうでない者に比べて発症リスクが3.7倍であった。
※功刀浩、『こころに効く精神栄養学』、p95より引用

また、ドーパミンやセロトニンなどの神経伝達物質合成に必要な葉酸は、妊活には必須の栄養素ですが、功刀先生はうつ病の治療や予防にも有効である理由として、「血清中や赤血球中の葉酸濃度が低いとうつ病リスクを高めるという結果は、比較的一致している」「食生活から葉酸の摂取量が少ないと、うつ病リスクを高めるという結果を得ている調査が多い」「葉酸の補充療法はうつ病治療に効果的であるという報告が少なくない」ことをあげています。

臨床的には、鉄や葉酸欠乏を改善さえすれば心の不調も解決するという単純な話ではけっしてありません。しかし、ビタミンやミネラル不足がリスクを高める要因のひとつであるということはもっと意識されてもよいと思います。

<参照>
■功刀浩、『こころに効く精神栄養学』、女子栄養大学出版部

■花岡正智、「医師が教える妊娠しやすい生活養生」、子宝カウンセラーの会、2021年6月13日