プラスチック製品の化学物質が産後うつのリスクを高める可能性


Illustrated by hozu

妊婦がフタル酸エステルやビスフェノールなどプラスチック製品などに含まれる化学物質にさらされることは、産後うつ病発症の一因になりうると米国の研究グループが発表しました。

妊婦139人を対象に、妊娠初期と中期に尿中の化学物質濃度を、そして中期には血液中の性ホルモン濃度も測定し、出産4カ月後のうつ病との関連を調べたところ、尿中のフタル酸エステル濃度が高いほど、産後うつを発症する可能性が高くなることがわかりました。

また、体内の環境ホルモン値が高いほど、プロゲステロン値が低いこともわかりました。プロゲステロンは月経周期や妊娠初期の流産予防、気分安定に重要な役割を果たすホルモンです。

今回の研究の重要性について、研究著者のメラニー・ジェイコブソンさんはこう言います。

「フタル酸エステルは環境内に広く浸透しており、米国内のほぼすべての妊婦から検出されます。もしこれらの化学物質が出産前のホルモンレベルに影響し、後に産後うつを引き起こすのであれば、これらの化学物質への暴露を減らすことは、産後うつを予防するための妥当な手段となるでしょう」

米国では妊婦の5人に1人が産後うつを経験していると言われていることから、専門家はさらなる規制を求めていますが、これらの化学物質は消費者製品、おもちゃ、化粧品、薬品、建築資材など広く用いられ、現代では逃げきることはほぼ不可能です。容易に体内に侵入してきますが、感受性の問題もあり、化学物質への暴露がほぼ気にならない人もいれば、ものすごく影響を受ける人がいることもやっかいなところです。

ただ、お子さんが産まれると、やはり少しでも安全なものをとノンケミカルや無農薬を追求される方が少なくありません。ですから、赤ちゃんを望まれるのであれば、その時から赤ちゃんが我が家にいることを想定して、準備していくという感じで少しずつ取り組んでみるのはどうでしょうか。

ボストン子供病院の小児科医であるクレア・マッカーシーさんは、化学物質への暴露を避けるために個人レベルでもできることがあるとして、「プラスチック容器に入った食べ物を買わない」「無香料の製品を使う」「食品や飲料品の保存にはガラスや陶器、金属製の容器を使う」「手作りの洗剤を使う」などを勧めています。

少しずつでも化学物質への暴露を減らし、解毒を続けていけば、塵も積もれば山となるではないですが、ある程度の年月が経ったときに大きな差となって現れると思います。

<参照>
■Melanie H Jacobson et al, Prenatal Exposure to Bisphenols and Phthalates and Postpartum Depression: The Role of Neurosteroid Hormone Disruption, The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, Volume 106, Issue 7, July 2021, Pages 1887–1899, https://doi.org/10.1210/clinem/dgab199, Published: 01 April 2021
■Misha Gajewski, Exposure To Harmful Chemicals In Plastics May Increase Risk Of Postpartum Depression, Study Finds, Apr 1, 2021, Forbes