精巣温度の上昇が精子形成障害を引き起こす


Illustrated by まい

妊活中の男性はトランクスを勧められます。

ハーバード大学の研究によると、トランクスを着用していた男性は、それ以外のタイプの下着を着用していた男性と比べて精子の濃度が25%高く、総精子数は17%多く、運動性が高い精子の割合が高いことがわかりました。

今回、自然科学研究機構基礎生物学研究所の研究グループが、精巣温度の上昇が精子形成を障害する機序について発表しましたので、ご紹介します。

同グループは、独自開発した精巣の体外培養法を用い、温度だけを変化させて精子形成に及ぼす影響を評価したところ、37~38℃では減数分裂の進行、36~37℃では減数分裂の完了、35~36℃では精子細胞の成熟が障害され、40℃では生殖細胞が全く観察されなかったと発表しました。

この研究から「精巣温度の上昇は単独で精子形成障害の原因になる」「複数の温度感受性段階が存在する」「1℃の違いで障害を受ける段階が異なる」ことが明らかになりました。

単に「トランクスをおすすめします」だけでなく、「なぜなら、こういう研究結果があるからです」という根拠があると、患者さんもより納得して行動を起こすことができます。
有用な知見であると思います。

<参照>
■Kodai Hirano et al., Temperature sensitivity of DNA double-strand break repair underpins heat-induced meiotic failure in mouse spermatogenesis, Commun Biol. 2022 May 26;5(1):504. doi: 10.1038/s42003-022-03449-y.
■小野寺尊允、高温で精子形成できない機序解明に前進、Medical Tribune、2022年05月31日
■Lidia Mínguez-Alarcón, Type of underwear worn and markers of testicular function among men attending a fertility center, Hum Reprod. 2018 Sep 1;33(9):1749-1756. doi: 10.1093/humrep/dey259.