2月になると、和菓子店には餡を包んだもちを椿の葉で挟んだ椿餅がお目見えします。
公達が蹴鞠を楽しんだあとに食べる定番のお菓子ということで、源氏物語にも記載があるほど古くから親しまれているお菓子です。
木偏に春で「椿」という漢字を持つツバキは、文字通り春が来たことを告げる花のひとつです。
花全体が落ちるさまが首が落ちるのに似るため、縁起が悪いと言われることもありますが、長寿であることに加えて艶やかな常緑の葉を持ち、冬の寒さに耐えて赤い花を咲かせる椿は活力の象徴とされ、各地で神木として大切にされてきました。
白ツバキの木の下には宝物が埋まっているなど、ツバキにまつわる昔話は多くありますが、子宝に関連する話もあります。
淡路島の伊弉諾神社には子宝を授けてくれると信じられている子生(こなし)椿があったと言われます。
また、宮城県の港神社には子孕み(こばらみ)椿があり、この木を抱きかかえると子宝に恵まれると伝えられているそうです。
寒い冬でも生命力にあふれるツバキにあやかろうとした人々の願いが偲ばれます。
<参照>
■有岡利幸、『縁起のよい樹と日本人』、八坂書房