NHKスペシャル「人体」 生命誕生に必要なのは母と子のコミュニケーション

 

 

「あなたはどうやってヒトになったのか」

というすごい問いかけでNHKスペシャル「人体」第6集「”生命誕生”見えた!母と子 ミクロの会話」は始まります。次々と臓器ができる仕組みに大切なものは、細胞と細胞が声をかけあうメッセージ物質です。番組の一部を紹介します。

 

妊娠判定を行うための内分泌検査ではhCGを測定しますが、hCGは受精卵が子宮に根付くためにお母さんに最初に送るメッセージ物質です。
「ここにいるよ」と伝えるhCGが血液の流れに乗って卵巣に届くと生理が止まって子宮が厚くなり、受精卵が包み込まれます。受精卵がメッセージを発することではじめてお母さんの体は妊娠の準備をすることができるのです。

 

ES細胞はWNT(ウィント)というたった一つのメッセージを与えられただけで心臓の細胞になりますが、実際の受精卵の中でもメッセージ物質が細胞を導き、臓器を作っていきます。

現在、わかっているだけで200種類以上の細胞がありますが、それらのもとは1個の受精卵です。まず心臓ができ、心臓が「肝臓になって」というメッセージを出すことで肝臓が作られます。その後、メッセージ物質を互いに出し合いながらいろいろな臓器ができていきます。

この「ドミノ式全自動プログラム」は枝分かれする時々でメッセージ物質が必要ですが、そのタイミングや濃度が少しずれただけでもうまく行かない精密なものです。

 

一つの受精卵が赤ちゃんになるということは、受精卵がリンゴ一個だとしたら、赤ちゃんは身長500メートルにも成長するということです。大きく育つためにお母さんと赤ちゃんの共同作業が始まります。

 

赤ちゃんは酸素と栄養を胎盤に頼っていますが、母子間のメッセージ物質のやりとりも胎盤を通して行われます。お母さんは「もっと伸びなさい」というメッセージ物質を赤ちゃんに送り、それを受けて赤ちゃん側の絨毛が伸びてより多くの酸素と栄養を入手できるようになります。

 

赤ちゃんが大きくなるにつれて、より多くの血液が必要になります。

赤ちゃんは絨毛から「もっと大きくなりたい」というメッセージ物質PGFを出します。これをお母さんの子宮が受け取ると血管の幅が広がり、赤ちゃんに与える血液の量を増やします。

絨毛はさらに伸び、先端が子宮に届きます。子宮の血管を拡大して観察すると、赤ちゃんの細胞が子宮の壁に大量に見られます。絨毛が子宮の壁に潜り込んで母親の血管の内側に割り込み、血管の壁が壊されることで、血管の幅がさらに広がりより多くの血液が赤ちゃんに与えられます。妊娠初期と比べると、母親の血管の直径は約10倍になっています。

この母親の血管を突き破る現象はチンパンジーなど人間に近い種だけの特徴で、脳を大きく発達させるためと言われています。

 

番組のCGを見ていると、こんなにすごいことがお母さんのおなかの中で起こっているのかと素直に驚きます。

妊娠とその継続において、細胞間で、そして母子間でメッセージ物質のやりとりをきちんと行えるかどうかが重要であることがよくわかるよい番組だと思います。

 

 

<参照>
■NHKスペシャル、「人体」第6集「”生命誕生”見えた!母と子 ミクロの会話」、2018年3月18日