私は、産後の不調に悩まれる方に、耳への温灸をおすすめしていますが、2025年8月に公開された論文が参考になると思いますのでご紹介します。
徐州医科大学他の研究チームによる「予定帝王切開における産後の子宮収縮痛に対する経皮的耳介迷走神経刺激(taVNS):ランダム化臨床試験」において、予定帝王切開を受ける女性の産後の子宮収縮痛に対する経皮的耳介迷走神経刺激(taVNS)の効果が検証されました。
帝王切開を受けた女性156人を対象としたランダム化臨床試験において、3日間の術後を通してtaVNSを3回実施した群は、偽の刺激を受けた群と比較して、子宮収縮痛のスコアと切開創の痛みのスコアが軽減したことが判明しました。
副次評価項目には産後不安、産後うつ、産後回復の質、および睡眠の質が含まれました。taVNS群はうつと不安のスコアが低く、術後3日目の回復の質および術後2日目の睡眠の質のスコアは、偽の刺激を受けた群と比較して、有意に高い結果を示しました。
これらの結果から、研究チームは「taVNSが帝王切開後の女性における産後の子宮収縮痛を緩和し、術後の回復を促進するための安全かつ効果的な治療法となる可能性を示唆している」と結論づけています。
経皮的耳介迷走神経刺激(taVNS)は、耳甲介に微弱な電気刺激を与えることで、迷走神経を介して脳のさまざまな領域の神経活動を調節しようとするものです。
迷走神経は脳と主要な臓器をつないでおり、特にリラックスを促す副交感神経の主要な働きを担います。迷走神経が体表に近い部分に露出しているのは耳だけです。皮膚の上から刺激を与えることができるため、患者さんへの負担が少ないのが利点です。
同様の効果は、耳への温灸でも可能です。私が開発した邵氏温灸器は耳全体をあたためることができるので、わざわざツボをとる必要がなく、専用のクリップで安全に温灸をすることができます。温灸剤はヨモギに松節とシナモンを加えてパワーアップし、煙とにおいを極力抑える加工をしています。続けて行えば、体を助ける大きな力になります。ぜひ、お試しください。
<参照>
■Xingyu Xiong et al., Transcutaneous Auricular Vagus Nerve Stimulation for Postpartum Contraction Pain During Elective Cesarean Delivery A Randomized Clinical Trial, Published Online: August 29, 2025, 2025;8;(8):e2529127. doi:10.1001/jamanetworkopen.2025.29127

