厳しすぎる暑さが落ち着きはじめ、ようやく過ごしやすくなるかと思いきや、酷暑によるダメージで心身の調子を崩す方が少なくありません。疲れが取れない、気分が落ち込む、火照って汗をかいたと思ったら寒気がするなどの症状も出やすくなります。今回から3回にわけて秋の養生のポイントについてお話します。
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秋は乾燥の季節と言われますが、東洋医学には「秋湿」と「秋燥」という言葉があり、前半と後半で対処が違います。
前半は長雨や台風で湿気が多いので、むくみや下痢などの症状が起こりやすく、去湿が必要です。去湿の働きがある食材にはトウガン、レンコン、ヤマイモなどがあります。特に「おねしょのハーブ」の異名を持つタンポポがおすすめです。タンポポ葉から抽出された糖鎖、T-1は、毛細血管の血流を改善することが確認されており、体内の解毒を助けて気のめぐりをよくします。
江戸時代に84歳まで長生きし、『養生訓』の著者でもある貝原益軒は、夏バテにお灸を勧めています。お灸は湿を取り、気を補います。ご家庭では温灸が使いやすいです。おへその神闕と首の後ろの大椎というツボに温灸をするとよいです。
一方、およそ秋分の日を境に、乾燥や冷えが強くなり、皮膚の赤みやかゆみ、あかぎれが増えます。薬膳では滋陰のもの、例えばロバの皮を煮た阿膠(あきょう)や魚の煮こごりである魚膠、スッポンの甲羅をスープにした鼈甲がよく使われます。滋陰は体にコラーゲンを補充し、皮膚をしっとりさせます。北京ダックで知られるアヒルにも滋陰の働きがあり、家庭ではスープや煮物にします。
肺を潤すために、おかゆにユリネやハスの実、ハトムギ、小豆、ゴマなどを入れるのもよいです。