【前編】ナツメは子宮腔癒着症のラットモデルにおいて生殖能力と妊娠結果を促進する

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子宮腔癒着症(IUA)は月経痛や下腹部痛、続発不妊を引き起こすおそれがあります。外科手術やエストロゲン療法などいろいろな治療法がありますが、イラン、イラク、米国の研究者からなる研究チームが、子宮腔癒着症のラットモデルにおいて、ナツメが生殖能力と妊娠結果を促進することを示す論文を発表しましたので2回に分けてご紹介します。

ナツメの果実は漢方や各地の民間医療で古くから重宝されてきましたが、抗炎症作用と繊維素溶解作用があること、ビタミンCとB、マグネシウム、リン、カリウム、ナトリウム、亜鉛などのさまざまなミネラルを含んでいること、薬理学的効果のあるトリテルペン酸、フラボノイド、多糖類、サポニンなどの生理活性化合物を含むこと等が近年の細胞研究、動物研究、臨床研究を含む多くの研究で明らかになっています。

今回、研究チームは72匹の雌ラットを子宮損傷なしの正中線切除、治療なしの子宮損傷、子宮損傷後、10日間ナツメを経口投与する3つのグループに分け、子宮癒着に対するナツメの経口投与の治療効果と妊娠結果への影響を調査しました。

結果として以下のように述べられています。

ナツメによる治療により、組織学的評価と線維化マーカーの発現減少によって証明されるように、子宮組織の線維化が大幅に減少した。介入により胚の発育、妊娠率、妊娠結果によい結果が示された。ナツメは子宮外癒着帯が内臓に形成されるのを効果的に抑制した。損傷後にナツメを経口投与したグループの重要臓器において、毒性に関連する形態学的変化は観察されなかった。

これを受けて、「ナツメは抗炎症作用と抗線維化作用を持つ安全で強力な天然産物であることが示され、子宮腔癒着症を対象とした臨床研究の新たな候補としての可能性が見出される」と考察されています。

次回は同論文の実験結果について要約します。

<参照>
■Fereshteh Asgharzadeh et. al, Ziziphus jujube promotes fertility and pregnancy outcomes in Rat model of uterine adhesions, Front. Pharmacol. , 27 January 2025, Sec. Integrative and Regenerative Pharmacology Volume 15 – 2024 | https://doi.org/10.3389/fphar.2024.1496136