夜間頻尿に対する温灸治療の効果


Illustrated by 麦

夜間に排尿のために1回以上起きる症状のことを夜間頻尿と言います。高齢者の症状と思われがちですが、若い方からのご相談もめずらしいことではありません。

十分に眠れないとこころや体に影響を及ぼします。前立腺肥大症や循環器系疾患、睡眠時無呼吸症候群など病気のサインかもしれませんから、まずは医師の診察を受けてください。そして、病院での治療と並行する形で、セルフケアとして温灸をおすすめします。夜間頻尿にお灸が有効であることは鍼灸の臨床では知られていますが、今回は、全日本鍼灸学会雑誌に掲載された『夜間頻尿に対する温灸治療の効果-ランダム化比較試験を用いた検討-』を紹介します。

同論文では、夜間頻尿を有し薬物療法に抵抗性を示す36名の患者を対象に、温灸群(n=20)と温度が十分に上昇しないsham温灸群 (n=16) の2群にランダムに割り付け、患者自身に自宅で中極穴に1週間、毎日3壮、お灸をしてもらいました。


Illustrated by 丸山ミユ

結果、1日あたりの平均夜間排尿回数は、温灸群では治療前と比較すると有意な減少がみられましたが、sham温灸群では有意差はみられませんでした。これを受けて、研究チームは「中極穴への温熱刺激が1週間の平均夜間睡眠中排尿回数を減少させた可能性が示唆された。中極穴への温灸治療は夜間頻尿に対して有効な治療方法の一つになり得ると思われた」と結論付けています。

お灸は、患者さん自身が自宅でできるということが利点です。毎日のことですから、通院しなくてよいというのは負担が少ないです。

中極とあわせて八髎(はちりょう)穴に温灸をするのもおすすめです。
ぜひお試しください。


Illustrated by 丸山ミユ

<参照>
■冨田賢一 et al, 夜間頻尿に対する温灸治療の効果 ランダム化比較試験を用いた検討、全日本鍼灸学会雑誌,2009年第59巻2号,116-124、
DOI https://doi.org/10.3777/jjsam.59.116