政府は来春にも拡充される不妊治療の治療費助成制度に不育症対策も盛り込む方向で検討を始めたことが報道されました。
不育症の原因には凝固異常、子宮形態異常、内分泌異常、夫婦染色体異常などが考えられます。不育症が疑われる場合、不育症一次検査を行うことが推奨されていますが、ただでさえ高額な不妊治療費に加えて不育症の検査費用がかかるとなると、患者さんには大きな負担になります。かといって原因不明のまま治療を継続して流産、死産を繰り返すことはそれ以上の重荷を患者さんとご家族に負わせることになります。
原因の一つとされている夫婦染色体異常について、2019年に出産ジャーナリストの河合蘭さんが「日本産科婦人科学会の臨床試験において、見た目はよいと判断された胚であっても、染色体本数が正常だった胚はたった3割ほどしかなかった」と報じています。胚移植が年間25万回以上も行われていることを考えると、少なくとも改善のための議論は必要であると思います。
検査によって全ての原因が明らかになるわけではありませんが、原因がわかればそれに適した対応を取ることができます。不妊治療は時間との戦いであり、昨今は新型コロナウイルスの影響から出産を躊躇される方も少なくありません。産みたいと思う方のハードルが少しでも低くなるような制度になっていくことを希望します。
<参照>
■中川聡子、流産や死産繰り返す不育症に検査費助成 厚労省検討、心理ケアも充実、毎日新聞、2020年11月18日
■河合蘭、体外受精の着床前検査「異常が7割」という衝撃 本来は「禁断」の臨床研究から得られたこと、東洋経済ONLINE、2019/03/23