おなじみの料理でもスパイスひとつで味に奥行きが出て新しい味わいになるのは驚きです。
中国では古代から様々なスパイスを調理だけでなく、医薬品としても活用してきました。四川料理に欠かせないコショウは強壮剤、消化剤、腹部膨満感に、ナツメグは下痢や消化不良に、クローブは口臭や虫除け、抗菌に使われます。
特にシナモンは中国と関係が深いです。紀元前2700年にはすでに「桂」として使われており、陸路と海路によるスパイス・ルートを通じて中国がアジアのシナモン貿易を支配していたため、ギリシア語の「スパイス」という意味の言葉と、「中国の」という接頭辞に由来する「シナモン」という名前がついたと言われています。また、中国南部にある美しい景観で有名な桂林の地名は、シナモン(肉桂)が自生していたことに由来するという説があります。
最近の研究では、シナモンにはコレステロールと血糖値を下げる作用、カンジダ症の予防、白血病や悪性リンパ腫の進行抑制、関節炎の炎症軽減、認知機能向上などの働きがあると報告されています。
かつては超貴重品だったスパイスですが、今は様々な種類を楽しむことができます。
スパイスの楽しみ方のひとつは、組み合わせを工夫することです。おそらく世界中で最も使われていてバリエーションも多いのは、カレー用のスパイスミックスではないかと思いますが、英国にはピクルスを作るときに一緒に漬け込むピクリングスパイスや、デザートやケーキ作りに用いられるプディングスパイスがありますし、ケイジャンシーズニングは米国南部の味として有名です。
暑さで食欲が落ちる今の時期、スパイスを上手に使って夏バテを予防していきましょう。
<参照>
■フレッド・ツァラ著 竹田円訳、『スパイスの歴史』、原書房