5/31~6/6の世界禁煙週間において世界各地で禁煙を呼びかける数々の取り組みがなされましたが、2021年5月に出生前から小児期に受動喫煙にさらされることが小学校~高校のADHDのリスクを増加させるという論文が発表されました。
中国、中山大学の研究グループが4万8,612例のデータを解析したところ、受動喫煙にさらされなかった群と比べて、受動喫煙にさらされた群は1.5倍、常に受動喫煙にさらされていた群は2.88倍、ADHDのリスクが高いことがわかりました。また、出生前と出生後早期に受動喫煙にさらされた群はADHDリスクが有意に高いこともわかりました。
ここで興味深いのは、「常に」受動喫煙に暴露されていなくてもADHDのリスクが高くなるということです。これは大阪国際がんセンターの田淵貴大先生が「喫煙本数を減らしてもリスクは高いままである」というメッセージを発信するうえで、以下のように説明しておられるのと共通します。
例えば、喫煙本数が1日20本の人は、吸わない人と比較して虚血性心疾患のリスクが80%増加します。そして、喫煙本数が1日5本の人のリスク増加は50%です。つまり、吸う本数を1/4にしたからといってリスクも1/4になるわけではないということです。
※大阪国際がんセンター 田淵貴大先生「世界禁煙週間に届けたい5つのメッセージ」より、一部、要約して引用。
1日に吸う本数が20本から5本になれば「かなり減った」と思いたくなりますが、ご自身の、そして周りの方の健康を損なうリスクを考えると充分ではありません。
タイの健康増進財団が作成したCM、『Smoking Kid』を紹介します。妊活をされている方は、ただでさえストレスがかかるところに禁煙のプレッシャーまでかけられるのは本当に大変だと思います。それでも、自分とご家族の健康を守れるのは結局、ご自身でしかありません。あなたが大切に思っている人たちもまた、あなたのことを大切に思っています。そのことに気づいて頂けたらうれしいです。
<参照>
■Li-Zi Lin et al., Association of Prenatal, Early Postnatal, or Current Exposure to Secondhand Smoke With Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder Symptoms in Children, JAMA Netw Open. 2021 May 3;4(5):e2110931. doi: 10.1001/jamanetworkopen.2021.10931.
■田淵貴大、世界禁煙週間に届けたい5つのメッセージ、Medical Tribune, 2021年05月30日■Thai Health Promotion Foundation – Smoking Kid (Original Version), 2012/06/24