インターネットの功罪:コロナ禍で妊産婦のメンタルに悪影響


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米ハーバード大学の研究チームが、新型コロナウイルスの影響で妊産婦に不安やうつ、孤独感などの影響がみられたと発表しました。世界64カ国でオンラインによるアンケートを行い、約6900人から回答がありました。実際にコロナに感染した人は全体の2%、濃厚接触者は7%でしたが、31%が不安やうつ症状、53%が孤独感、43%がPTSDを訴えるという結果になりました。

ここで興味深いのは、1日に5回以上、ソーシャルメディアやニュースなどでコロナに関する情報を入手する人は、1回未満の人に比べて心の健康が悪化するリスクが2倍以上高かったということです。ソーシャルメディアはブログやFacebook、Twitter、Instagram などのSNS、YouTubeなどの動画配信サービスを指します。

今、人々はスマホを片時も手放すことなく、数秒でも時間があれば画面を開いています。妊婦さんがコロナについて知りたいと思い、調べるのは当然ですし、ウェブサイトは情報検索にとても便利です。一方で、画面はエンドレスにつながり、興味がないのに画面をスクロールし続けてしまった経験がある人は多いと思います。コロナについての情報が延々と続く画面をスクロールし続けていれば、1日に検索する回数がたとえ5回であっても、トータルではかなりの時間、コロナの情報にさらされていることになります。それが毎日、しかも長期間続くとなると、頭の中はコロナのことで大半が占められ、不安になってしまうのはある意味で当然ともいえます。

アップルのスティーブ・ジョブズやツイッターのエヴァン・ウィリアムスが自分の子どもにiPadを使わせなかったことはよく知られていますが、彼らは依存症になるようにデザインされたテクノロジーがあることをわかっていたからです。『僕らはそれに抵抗できない』に詳しく書かれているように、人々をサイトにつなぎ留めておくことが利益を生むため、ソーシャルメディアにはさまざまな「仕掛け」がされています。

ネットは便利である反面、節度ある範囲で使用するのはとてもむずかしいものです。今回の研究は、無自覚にネットを使っていると心身の健康に影響を及ぼすということが表れた一例であるともいえます。

<参照>
■Karestan C. Koenen et al., A cross-national study of factors associated with women’s perinatal mental health and wellbeing during the COVID-19 pandemic, PLOS ONE, Published: April 21, 2021https://doi.org/10.1371/journal.pone.0249780

■アダム・オルター、『僕らはそれに抵抗できない』、ダイヤモンド社