「体を冷やすから、ビールは大好きだけど飲まないようにしています」という方がおられました。食は生きる喜びですし、ビールに欠かせないホップの役割を見ると、一様に避けてしまうのはもったいないようにも思います。ですから、今回はちょっと違ったビールの楽しみ方をご提案します。
漢方では、ビールの苦味や香りをつけるホップには食欲増進、利尿、鎮静作用があるとされます。ドイツでは、ホップ農園で働く女性は肌がきれいだと言われます。これはホップに含まれる物質が女性ホルモンと同じような働きをするためで、更年期症状の緩和にもよいとされます。殺菌作用も強く、11世紀以降、ヨーロッパでホップが広まったことは、自然発酵で腐敗しやすかったビールの腐敗率を大きく下げることに貢献しました。
とはいえ、キンキンに冷えたビールを飲んでいたら、体を冷やして体調を崩してしまいます。ですので、ビールを飲まれるときはエールビールを選ぶのはいかがでしょうか。日本では、ビールといえばスッキリとしたのどごしや爽快感が求められます。一方、味と香りを楽しみながらゆっくり味わうエールビールは常温、または少しぬるいくらいがより美味しく飲めます。
ビールは鎮静作用があるため、気持ちが落ち込んでいるときにたくさん飲むのはよくありません。また、エールビールのアルコール度数は高めのものが多いため、量に注意するというのは大前提ですが、適量を楽しみながら飲めば、体にも心にもよい効果があると思います。「ビールは悪」と問答無用に遠ざけるのではなく、工夫して楽しんでみてください。
<参照>
■青井博幸、『ビールの教科書』、講談社