【BOOK】『話を聞かない男、地図が読めない女』


Illustrated by kotone

1998年初版とかなり前に出版された『話を聞かない男、地図が読めない女』ですが、コロナ離婚など最近、コミュニケーションの不調が表面化しているので、何か参考になることはないかと読み直してみたら、今でもおもしろく読めることに、進歩がないと嘆くべきなのかはわかりませんが、気づきました。

男女の違いをテーマとして取り上げることに抵抗を感じる方もおられると思いますが、本書には性差の優位や男女平等の精神を損ねることは一切含まれていません。男女はそれぞれ思考や感情の動き方に傾向があり、お互いに違いを理解し合って良好な人間関係を築いていくことが著者の意図であることを先にお伝えさせてください。

さて、本書ではいろいろ興味深いトピックがありますが、ストレスを受けた時、概して女性はしゃべり、男性はだまると著者は言います。ストレス処理の方法が真逆であるということです。

身振りなどの非言語コミュニケーションも含めて男性が1日に発する言葉は平均で約7000と言われているのに対し、女性は平均2万、約3倍です。つまり、女性にとって「話す」ことには男性とは違う意味合いがあることが示唆され、それが「話すことによるストレス解消」です。

女性にとって「話す」ことは心を落ち着かせ、ストレスを外に出す特別な行為だと著者は言います。ですからその話に脈絡がなくても、結論が出なくても全くおかしなことではありません。しかし、典型的な男性脳の人は話の中に結論を求めるので、「話だけでも聞いてほしい」という女性に対し、男性は「気にしすぎ」「こうしたらいい」と相手の話すという行為を無意識にブロックしてしまうのでこじれてしまうというわけです。

かといって、ただふんふんと話を聞いていても雲行きが怪しくなるときがあります。というのは、コミュニケーションにおいて男性は言葉をその通り解釈する傾向があるのに対し、女性は言葉に加えて相手の表情の変化、声のトーンなどの非言語情報も含めて相手が「適当に答えている」とか「本心ではない」と判断しているからです。「ちょっと、本当に聞いてるの?」と言われたことのある男性は、概ねこれです。

一方、男性はストレスを受けると黙り込む傾向にあると著者は言います。夫が落ち込んでいる時、妻が「何かあったの」と聞いても「一人にしてくれ」と素っ気なく言われることがあります。妻は「何よ!」と思いますが、これは「典型的な男性脳の持ち主は一度に一つのことしかできない」という特徴からくる反応だと著者は言います。男性は解決策を出すことに集中しているので、それ以外のことに手が回らないのです。ですから、男性が口を閉ざしたらしばらくそっとしておいて様子を見るのが得策だと著者は言います。

もちろん全ての問題が男性脳、女性脳で片づけられるわけではありませんが、あるある話も満載で何かしら役に立つのではないかと思います。

<参照>
■アラン・ピーズ バーバラ・ピーズ、『話を聞かない男、地図が読めない女』、主婦の友社