健康のために多くの方が食生活の改善を心掛けています。その一方で、「こんな食事にしなければいけない」「あんな食事はダメだ」と縛られることに正直、うんざりしておられる方も少なくないのではないでしょうか。
食事の指導において、「これは食べてはいけない」と言われることはしょっちゅうですが、「そう言われるともっと食べたくなってしまうのが人間だ」と米国の登録栄養士であるエリス・レッシュさんは言います。レッシュさんが勧める「食事はこうするべきだ」という考えから逃れるための方法があります。それは、まず「食べてはいけない食材リスト」を作成し、さらに「あまり食べない方がいいもの」と「絶対に食べてはいけないもの」にわけます。そして「食事をして2~3時間後、落ち着いた場所でその中から選んだ食材をひとつ、思う存分食べる」というものです。食材には「よい食材」も「悪い食材」もなく、食べ物とよい関係を築くには、「何を食べてもいい」という選択ができることが大切だとレッシュさんは言います。
これは、Googleで社員の食生活改善に取り組んできたミカエル・バッカーさんのやり方にも通じます。例えば、コーヒーを入れることができる休憩室には果物やお菓子も置かれていますが、コーヒーメーカーから遠ざけるだけでお菓子を取る確率が男性で23%、女性で17%減少しました。そこでコーヒーメーカーの近くには新鮮な果物が入ったボウルだけを置き、お菓子類は離れた所にある不透明な引き出しに入れました。また、冷蔵庫内の目につくところには水やフレーバー水、にんじんスティックを置き、ジュースは下部の不透明の扉がついている所にしまいました。
このように、バッカーさんは「食べものが置かれる環境」を変えました。「重要なのは、従業員が選択の自由を持っているということです。見えにくくすることで誘惑を減らしますが、何かを禁止したり、勧めているわけではありません」とバッカーさんは言います。
そもそも「健康によい食事とは何なのか」ということすら定義は非常に困難です。太めの体型であってもコレステロール値や血圧が理想的である人はざらにいます。おなかがすいた時に、おいしいと思うものを満足できる量だけ食べる、こんな単純なことが本当にむずかしいことに改めて気づきます。誰かが全てを解決する食事法を教えてくれることはありません。自分の体を信頼して、体からのメッセージを受け止めることがその方にとっての健康の近道だと思います。
<参照>
■Jane Black, How Google Got Its Employees to Eat Their Vegetables, One Zero, Feb 6 2020
■Sandee LaMotte, Intuitive eating: The anti-diet, or how pleasure from food is the answer, say its creators, CNN, January 31 2020