Paul Klee, photographed in 1911 by Alexander Eliasberg.
赤ちゃんのときは授乳や睡眠、おむつ替えの時間を記録する育児日記をつけられている方が多いです。妊娠中のできごとやご家族の気持ちを綴られたり、子どもさんが大きくなっても記録し続けている方もおられます。
世界でも有名な育児日記のひとつに画家、パウル・クレーの日記があります。
もちろん、クレーは育児日記を書いたつもりはなかったと思いますが、クレーが27歳の時に誕生した息子、フェリックスくんの記録の詳細さは半端ではありません。
新生児の頃は体重を1週間おきに記録し、病気の時は1日に何度も体温を測ります。そして、日常の何気ない仕草がたくさん書かれています。
「顔をゆがめて手をしゃぶる」
「言葉の練習。ヴヴウとプフ」
「鼻に皺を寄せる」
「差し出された二本の指につかまって起き上がり、座る。上手くいったと自分で笑う」
「パンは、できるだけ両手に持って食べたがる」
「テーブルのベルを鳴らすのが好きでしかたがない」
当時、妻が生計を立てていたため、クレーは制作の傍ら家事と育児に従事していたとのことですが、「子供を世に送り出すというのは、そんなに気楽なことではない!」とグチを言いながらも、フェリックスくんが好きでたまらない様子が目に浮かびます。
つい子どもに見入ってしまうのは古今東西を問わないようです。
抽象画家の巨匠と呼ばれるクレーですが、同じ親なのだと、クレーをとても身近に感じる一冊でした。
<参照>
■パウル・クレー、『クレーの日記』、みすず書房