医療保険の適用範囲案について


Illustrated by 白いねこねこ

2022年度からの導入が予定されている不妊治療の医療保険の適用範囲について、日本生殖医学会が「強く推奨する」「推奨する」とした項目が原則、保険適用となることを読売新聞が報じました。これには体外受精や男性不妊への薬物治療、2回続けて流産した女性に流産回避の目的で行う着床前検査などが含まれます。

保険適用の範囲について、2020年10月に開催された医療保険部会では、「患者の安全性の確保と医療の標準化、医療アクセスへの公平性の確保を重視すべき」としながらも「不妊治療は色々と進歩しており、様々な治療の方法がある。そういった様々な治療に対して適応できるような保険採用をしないと、その治療自体が時代遅れになってしまい、効果が少なくなる」と、その線引きに苦慮する様子が見られます。

実際、「エビデンスが弱い」として現時点で保険適用が見送られるものとして、タイムラプスで妊娠の可能性が高い受精卵を選ぶ治療や子宮内の細菌を調べる検査が含まれていますが、これらは導入している医療機関も多く、不妊治療は医療機関によって考え方や技術に大きな差があります。どこまでの治療を「標準化」するのかについては引き続き難航すると思われます。

不妊症は日本に限らず世界中で問題になっており、マウントサイナイ医科大学のシャナ・スワン教授は世界の合計特殊出生率は1960年から2018年にかけて毎年1パーセント近く低下していると指摘しています。年に1パーセントということは10年間で10パーセント、50年間で50パーセント以上になります。

このような状況において今後、不妊治療はより必要になることはあっても縮小することは考えにくく、不妊治療に対する社会の受け止め方も変わっていくと考えられます。保険適用は日本の不妊治療において大きな節目になりますが、少しでも患者さんが使いやすいものになるように柔軟にアップデートしていく制度となることを期待します。

<参照>
【独自】体外受精・男性不妊手術に保険適用へ…22年度の導入目指す、読売新聞、2021/07/04
■厚生労働省、不妊治療の保険適用について
■Shanna H. Swan, Stacey Colino, Reproductive Problems in Both Men and Women Are Rising at an Alarming Rate, Scientific American, March 16, 2021

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