「不妊治療、生殖医療の最前線がこの一冊で分かる!」とうキャッチコピーにひかれて手に取りました。
不妊治療の現在地に加え、生殖医療が生み出した新しい家族形態や、着床前診断のメリットと課題をどう社会として受け入れていくのかなど、今後、大きなトピックになることがまとめられており、読み応えがある一冊です。
皇后雅子さまのご出産時の主治医であり、今も現役産婦人科医としてご活躍の堤治先生は、本書で「5つの妊娠の新常識」を提唱されています。
その中のひとつである「43歳からでも不妊治療は始められる」に共感しました。
堤先生はこう言います。
(公的な保険において43歳未満という年齢制限を設けたことは)現場にいる医師としては、43歳以上の女性たちに「保険の対象外だから出産は諦めた方がいいかもしれない」といったネガティブなメッセージを送ってはいないだろうかと非常に懸念しています。
『妊娠の新しい教科書』p37より引用
私も現場で臨床をしています。
年齢が高い方も多くおられますが、ご自身で体づくりをされて、43歳以上でも少なくない方々が無事に出産されています。
不妊治療に年齢が大きく関与するのは事実ですが、妊娠、出産、育児に必要な体づくりができているかについては大いに個人差があり、43歳という年齢で線引きできるものではないと思います。
保険適用に年齢制限が設けられたからといって、当事者も、周りも「43歳を超えたから、妊娠は諦めたほうが良いかもしれない」などと考える必要はないのです。
「43歳から始める不妊治療がある」。本書を手に取ってくださった方に、ぜひ「妊娠の常識」として覚えておいていただきたいと思います。
『妊娠の新しい教科書』p40~41より引用
堤先生の言葉に励まされる方は少なくないと思います。
<参照>
■堤治、『妊娠の新しい教科書』、文春新書