七草粥を自由に楽しむ


Photo by 浩士知原

「1月7日に七草粥を食べると、1年間を無病息災で過ごせる」というのは、どなたも一度は聞いたことがあると思います。

春の七草、セリ・ナズナ・ゴギョウ・ハコベラ・ホトケノザ・スズナ・スズシロ、は食材としてだけでなく、貧血や痰切り、風邪予防、健胃、強心などに民間薬としても使われていました。

昔の人は知るよしもありませんが、春の七草にはビタミン類や鉄、亜鉛など栄養素が多く含まれます。昔の人が、若菜の強い生命力を自分に取り入れることで体調がよくなると考えても不思議ではありません。

ただ、近年は実際に七草粥を食べたことのある方は少ないのではないでしょうか。ダイコンやカブは今もよく食べられますが、ナズナやハコベラ、ホトケノザは見たことがない方も多いと思います。

とはいえ、七草粥を「昔の風習」として廃れさせてしまうのは惜しいと思うのです。なぜなら、これから春にかけて解毒を意識する最初のきっかけに適していると思うからです。

それなら、今の生活に合うように、アレンジしていけばいいのではないでしょうか。

実際、雪深いなど、七草をそろえることができない地方では、入れる若菜の種類が異なりますし、ゴボウやニンジン、コンブ、納豆を使う地域もあります。東京日日新聞社が1933年に選んだ「新しい春の七草」では、菜の花やスミレ、タンポポ、ツクシなどが含まれていました。七草粥が身近な存在であるからこそ、様々に手が加えられてきたのだと思います。

昔からの知恵を四角四面に捉えるのではなく、それが伝えたいことを今の時代に合わせて工夫していくことが大事です。

解毒を意識し、新鮮な野菜を食して新しい季節のエネルギーを取り込むきっかけとして、これからも七草粥に親しんでいただけたらと思います。

<参照>
■有岡利幸、『春の七草 (ものと人間の文化史)』、法政大学出版局

春の七草 (ものと人間の文化史)