「しつけ」のためでも体罰は容認されない


Illustrated by 松本松子

1979年、スウェーデンでしつけのために親が子どもを叩く行為が法律で禁止されたことを皮切りに、各国で同様の法律が施行されていきました。2020年11月に英国のスコットランドも加わり、体罰禁止を法制化した国は58カ国になりました。英国では、ウェールズも2022年に施行の予定です。

日本では2020年4月に法改正で、子育てにおける体罰が禁止されています。しかし、2020年11月の全国の約5千人の保護者を対象とした厚生労働省のアンケート調査によると、この法改正を「知っている」と回答した人はわずか2割程度で、4割程度の人が「場合によっては(体罰を与えることが)必要」と回答しました。体罰を容認する層は、女性より男性、そして40代以降に多い傾向が見られました。2017年に日本で行われた子どもへの体罰の別の調査結果では、回答者の約6割がしつけのための体罰を容認していたと報告されていることから、わずかに体罰容認が減少したとはいえ、状況はほぼ変わっていないと言わざるを得ません。

厚生労働省の調査で「アンケートの時点から過去6カ月の間に1度でも体罰を行使したことがある」と回答した保護者は33.5%ですが、「体罰を与えた後に、しなければよかったと後悔した経験がある」と回答した保護者は88.7%にのぼることから、調査会社は「育児のストレスが子どもへの暴力に発展しているのではないか」と指摘しています。

今後、「しつけのために怒鳴る・叩くは仕方がない」という考え方は受け入れられなくなっていくと思いますが、法律で禁止すればなくなるという単純なことではなく、子どもを育てやすい社会とはどういう社会なのかということと不可分の問題であると思います。

<参照>
■「スコットランドでは親が子どもを叩く行為を法律で禁止」、『クーヨン』2021年1月号
■「子どもへの体罰が法律で禁じられたことを知っているひとは、わずか2割」、『クーヨン』2021年8月号

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