体外受精出生数が初の減少に転じる


Illustrated by 松本 松子

2020年の国内の体外受精出生数が、現行方式の記録が残る1986年以降、初めて前年を下回ったことが日本産科婦人科学会の調査でわかりました。

新型コロナウイルスによる治療控えも一因ですが、第2次ベビーブーム世代の女性が年齢的に治療がむずかしい局面に入り、時間の問題として予測されたこととはいえ、ついにきたかという感を持ってこのニュースを受け止めた方も多いのではないかと思います。

ただ、子宝相談に携わる者として、数字は数字として受け止めつつも、必ずしも悲観的になる必要はないと思います。

早乙女智子さんは、年齢が高くなると不妊治療が必要とする説に対してデータを示して反論し、「実際には生殖技術の進歩は高齢出産化を後押ししたが、出産数の増加の多くはそれに引きずられた自然妊娠だったことである。高齢出産がすべて体外受精によるものと錯覚してはいけない」と指摘しています。

不妊治療において体外受精は大変有用な治療法ですが、その治療法を支える体と心を日常で作っていくことは同じくらい大切で、私たちはその部分で貢献するべく、努力を重ねています。

目の前の患者さんを全力でサポートする姿勢は、これまでも、そしてこれからも変わりません。

<参照>
国内の体外受精出生、初の減少…コロナと適齢期女性減で20年は前年比201人減、読売新聞、2022/08/04
■拓殖あづみ、『生殖技術と親になること――不妊治療と出生前検査がもたらす葛藤』、みすず書房