体にいい食材は安い

私は各所で薬膳講座を行っています。
食の楽しみをお伝えすると共に、毎日の献立に応用できることを大切にしています。

一流の和食店でプロデュースされる薬膳料理のコースを楽しみながら学ぶ講座では、高級食材やプロならではの調理法、演出に感動します。

華やかな食卓は五感を刺激し、人生を豊かにするので、皆さん喜ばれますが、同じくらい「おなじみの食材がこんなに素晴らしい一品になる」ということに驚かれます。

薬膳には「難しい理論に基づいて作られた、珍しい食材をふんだんに使った高価なもの」というイメージがあるかもしれませんが、私は「スーパーで買うことができる食材に、実はすごい働きがある」ことをお伝えしています。

なぜなら、私たちは毎日食事をします。

1カ月に1回食べる「健康によい特別なもの」よりも、毎日口にするものの方が、私たちの体と健康には大きく関わってくるからです。

私はよく、「スーパーで一番安い野菜を買ってください」と言います。
スーパーで一番安い野菜が旬の野菜だからです。
旬の物は、その季節に起こりやすい症状に対応することを助けてくれます。

現代と違って、病気になったからといって気軽に医者にかかることができなかった江戸時代、人々は食を病気の予防に活用していました。

車浮代さんは著書『江戸っ子の食養生』で、江戸料理の特徴として以下の4つを挙げています。

冷蔵庫がない=旬の素材を、今日食べる分だけ買って食べる→新鮮、栄養豊富、エコ

燃料費が高い=料理に時間をかけない→栄養素をこわさない、時短レシピが多く簡単

料理法は切る・焼く・煮る=油をほとんど使わない→ダイエットによい、ヘルシー

四つ足食の禁止=肉をあまり食べず、食べたとしても少量→がん予防、胃腸にやさしい

これは飽食で病気を引き起こしている現代において、大いに参考になります。

健康になるために毎日、珍しい高級食材を食べる必要はありません。
体にいい食材は安いのです。

食材の働きを知り、旬のものをシンプルに料理し、適量を食べるということが毎日の食生活における基本だと思います。

YouTubeでも定期的に薬膳講座の一部を公開していますので、ぜひご覧ください。

<参照>
■車浮代、『江戸っ子の食養生』、ワニブックス

食欲がない時の薬膳