女性の周産期うつ病はだいぶ知られるようになってきましたが、パートナーの周産期や産後に男性もうつ病を発症するリスクが高まることはまだよく知られていないのが現状です。
英国の国民保健サービスは「新しく父親になった人のうち、最大で10人に1人が産後うつ病になる」と発表しており、これは出産後1年以内に産後うつ病になる女性の割合とほぼ同じです。
ボーンマス大学で心理学を研究するアンドリュー・メイヤーズ博士は、産後うつ病におけるホルモンの影響はわずかで、それ以上にうつ病の既往歴や出産後の睡眠障害、社会的支援の欠如、経済的困難などが原因となると述べており、女性とほぼ同じ割合で男性も産後うつ病になるのも納得できます。
米国予防医療専門委員会は、周産期うつ病の治療と予防に「説得力のある証拠」がある方法のひとつとして会話療法を提唱しています。
会話療法と聞くと大げさに聞こえますが、自分が本当に感じていることを話せる場があるかということです。
医師や専門家に話したい方もおられれば、親しい人の方が話しやすい方も、他人にチャットで話す方が話しやすい方もおられます。落ち着いて話したい方もおられれば、にぎやかなところで話したい方もおられると思います。
打ち明けるときに気まずさを感じるかもしれませんが、サポートを受けることは恥ずかしいことではありません。パートナーにがっかりされてしまうのではないかと心配する必要もありません。
赤ちゃんが生まれると生活が大きく変わるので、メンタルヘルスに悩むのは普通のことです。そして周囲からのサポートがあれば、より乗り切りやすくなります。
問題を抱え込まずに話すことを、ぜひ選択肢のひとつに加えてほしいと思います。
<参照>
■Andrew Mayers, Postnatal depression: what new fathers need to know – and how to ask for help, THE CONVERSATION, June 2, 2023
■US Preventive Services Task Force, Interventions to Prevent Perinatal Depression US Preventive Services Task Force Recommendation Statement, February 12, 2019, JAMA. 2019;321(6):580-587. doi:10.1001/jama.2019.0007