男性不妊症治療を助けるAI


Illutrated by Alwie99d

さまざまな分野で人工知能(AI)が活用されていますが、不妊症治療においても例外ではありません。

シドニー工科大学のスティーブン・ヴァシレスク博士の研究チームは、非閉塞性無精子症の男性から採取したサンプルから、高度に訓練された目よりも1,000倍速く精子を見つけ出すことができるSpermSearchというシステムを開発しました。

通常、精液中に精子が存在しないケースでは、複数のスタッフが長時間かけて組織の一部から精子を探しますが、ヴァシレスク博士によると「それは干し草の山の中から針を探すようなもの」で、エンブリオロジストの技量に大きく頼ることになります。

SpermSearchを使うと、精子が四角形で囲まれて表示されるので、精子を数秒で見つけることができます。SpermSearch はエンブリオロジストに代わるものではなく、支援ツールとして機能するように設計されており、同チームは現在、AIを臨床試験に導入する準備を整えているとのことです。

画期的なシステムだと注目が集まる一方で、クイーンズ大学の生殖医学の名誉教授であるシーナ・ルイス教授は慎重な意見を述べます。

「SpermSearchは未知数だ。現時点で7人の患者を対象とした非常に小規模な試験を経て概念実証の段階にあるが、商品化されるまでには2~5年かかるだろう。対象とする男性もごく少数であり、主流になることは考えにくい」。

AIのメリットとデメリットについてはようやく議論が始まったと言える段階ですが、医療がAIの利用可能性が高い分野であることは間違いありません。今後もフォローが必要なトピックであると思います。

<参照>
■Katherine Latham, How AI may be a powerful tool in treating male infertility, BBC News, 7 September 2023