3月20日ころから開花の便りが届きはじめた桜は、4月の前半には全国で満開を迎える見込みです。今年はぜひお花見に足を運んでいただきたいと思います。というのは桜の香りが心と体にとてもよい作用を及ぼすからです。
星薬科大学の竹ノ谷文子准教授は、桜の花びらから抽出されたエキスを使った研究で、桜の香りが持つヒトへの生理・薬理作用を報告しています。
桜エキスの芳香成分の約9割を占めるBzAは抗炎症作⽤や抗菌作用などの薬理作用が報告されていますが、竹ノ谷先生の研究により、前頭葉の脳血流量の増加、抗ストレス、免疫強化などの生理作用をもつことが確認されました。
さらに、桜エキスを使うことでオキシトシンに有意な増加がみられたことも報告されています。オキシトシンは抗鎮痛作用や抗不安作用などの薬理的作用を有し、コミュニケーションにおいて信頼や共感、愛情をもたらすとされます。
このようによいことがたくさんある桜の香りですが、論文にも書かれているように、天然の桜は開花期間が短く、花びらが大変繊細であるうえに香り成分が微量であることから、桜の芳香成分の抽出は容易ではありません。
一年に一度しかない絶好の機会ですから、ぜひお花見に出かけて桜の美しさを愛でつつ、しあわせの香りに包まれていただければと思います。
<参照>
■竹ノ谷文子、桜の香りによる脳に及ぼす影響の機能生理学的解析、星薬科大学運動科学教室