妊娠判明前の吐き気止め薬「ドンペリドン」服用について


Illustrated by しらさん

これまで妊婦禁忌の医薬品であった吐き気止め薬の「ドンペリドン」において、2025年4月の厚労省審議会で禁忌解除が了承され、5月20日に添付文書の禁忌項目から妊婦が削除されました。

妊娠中の服薬相談に応じる国立成育医療研究センターの妊娠と薬情報センターでは、2005年から2022年まで、妊婦禁忌の医薬品の中で最も多かった相談がドンペリドンに関連するものでした。ドンペリドンは、主に慢性胃炎に伴う吐き気などに用いられますが、実際はつわりであったのに、服用後に妊娠が判明したため不安になるケースが多かったとのことです。

同センターは相談例などから事例を調査し、ドンペリドンを服用した場合としなかった場合において、先天異常の発生率に有意差がみられなかったことから、「ドンペリドンが妊娠初期に投与された場合でも、胎児の先天異常のリスクを高める可能性は低い」と報告しています。また、カナダやドイツなどの添付文書では妊婦禁忌とされていないことなども確認されています。

妊娠が判明する前にドンペリドンを服用したことにおいて、妊婦さんが不安を感じる要素が改善されたのはよいことですが、注意してほしいのは、今回、妊婦への禁忌は解除されましたが、つわりはドンペリドンの適応症ではないということです。

適切な服薬で妊婦さんの体調が安定するというメリットを損なわないためにも、妊娠中は服薬や中断を自己判断するのは避け、医師に相談することが重要です。

<参照>
吐き気止めに使われる薬・ドンペリドンの”妊婦禁忌”解除へ ~薬を服用した妊婦さんが、安心して妊娠を継続できる環境の整備へ貢献~、国立成育医療研究センター、2025年4月28日
■大沢奈穂、妊娠中も「吐き気止め」OKに…薬の「禁忌」解除進む 服用しない場合との差みられず、読売新聞、2025年6月18日