お金の異名を持つ木


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年末ジャンボ宝くじの広告を頻繁に目にするようになると、いよいよ年末感が高まります。

お金と言えば、一両、十両、百両、千両、万両とお金の異名を持つ木があります。
一両はアリドオシ、十両はヤブコウジ、百両はカラタチバナ、千両はセンリョウ、万両はマンリョウです。
これらは冬でも赤い実と緑の葉なので、お正月の寄せ植えにも用いられ、縁起のよい木として知られています。

ヤブコウジは中国では紫金牛と言い、根は漢方薬として解毒剤や湿疹、膀胱炎などに使われます。

『本草綱目拾遺』には薬用以外に鉢植えとしても愛でられたと書かれています。

日本でも万葉の昔から縁起のよいものとして人気があり、江戸後期ころから突然変異で白・黄・桃色などの斑が入る「葉変わり物」が珍しがられたようです。

ところが、明治中期に新潟県を中心にヤブコウジは投機の対象となり、常軌を逸した高値で取引されるようになりました。珍しい品種は一鉢が米一俵と同じ値段の5円で、中には一鉢2~3千円になるものもあったので、一般の人々までもが売買に熱中し、離婚や夜逃げが相次いだそうです。
その背景には大水害と大凶作があり、生活が不安定になったため、一攫千金を狙う人々が投機の加熱を引き起こしたと言われています。

サクランボのような赤い実がぶら下がるかわいらしいヤブコウジに、このようなエピソードがあるとは驚きでした。
人々の生活が安定していることがいかに大切かということを、この縁起のよい木から学びました。

<参照>
■村上守一、表紙について(ヤブコウジ)、富薬第41巻1号No.354、2019/01/01
■新潟県立文書館、[第37話]紫金牛の投機ブームと新潟県の取締り