静かな流行病:子宮内膜症


Illustrated by みゅーん

オーストラリアには子宮内膜症に関する啓蒙と根拠ある情報の提供を行う非営利団体、エンド・アクティブがあり、約70万人が登録しています。創設したのは自らも子宮内膜症に苦しむシルビア・フリードマンさんと母のリズリー・フリードマンさんです。

子宮内膜症は子宮内膜に似た組織が子宮以外の場所にでき、時に他の臓器と癒着して強い痛みを引き起こし、うち30%が不妊を経験します。女性の10人に1人とかなりの割合で罹患していると推計されているにもかかわらず、婦人科医のスーザン・エバンズ医師は「(子宮内膜症は)静かな流行病で、世間の冷たい視線や誤解、女性が抱える深刻な痛みの重要性を簡単に無視する社会の風潮によって隠されてきた」と言います。

実際、2013年にシルビアさんが卒業論文でメディアがどれだけ子宮内膜症を取り上げているかを書くためにインターネットでオーストラリアの大手メディアが過去10年にこの病気を取り上げた回数を検索したところ、結果はゼロで、文献レビューができないという理由で講師による指導も取りやめになりました。しかし、フリードマンさん親子をはじめ多くの人の活動が実を結び、今、オーストラリアでは子宮内膜症国家アクションプランが策定され、約3億8200万円の予算が投じられています。

エバンズ医師は「世界中で子宮内膜症や子宮の痛みは見過ごされ、調査されず、管理もされず、支援を受けられない。この分野において最も満たされていない需要で、変化はゆっくりだ」と語りますが、日本も例外ではなく、強い痛みを伴う生理は「普通」のことだと多くの女性が思っています。

日本産婦人科医会の報告によると、不妊症患者の25~50%に子宮内膜症が認められ、子宮内膜症と不妊との関連は明らかです。適切なアドバイスと治療を受けるための取り組みは日本でも必要とされています。

<参照>
子宮内膜症「静かな大流行」 母娘の啓蒙活動が国を動かすまで 豪、BBC News、2018年8月29日
EndoActive
■日本産婦人科医会、「(4)子宮内膜症性不妊への対応

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