骨粗しょう症は決して高齢の方のみの病気ではありません。
まれではありますが、出産後に脆弱性骨折を引き起こす妊娠後骨粗鬆症があります。出産後に背中痛や腰痛で病院に行っても、レントゲン検査で見つけにくいことから骨折が見逃されるケースもあります。
奈良県立医科大学の小泉実幸先生の研究チームは、1,300万人規模のデータから脆弱性骨折を来した出産例のうち352例を検討し、妊娠前に比べて脆弱性骨折リスクは妊娠中期および後期で有意に低下し、産後6カ月間で有意に増加していたことを報告しています。
小泉先生が「周産期のE2のダイナミックな変化が骨折リスクの上昇と関連している可能性がある」と指摘しているように、エストロゲン(E2)には骨保護効果があります。妊娠が成立するとE2は出続ける状態になり、妊娠後期まで増加していきますが、産後は急激に減少します。
もちろん、E2だけが妊娠後骨粗鬆症の原因ではありませんが、産後はE2欠乏により骨量が減少することを知り、養生することが大切です。
妊娠前に十分に体作りをすることを心がけ、産後はカルシウムとタンパク質を含むバランスのよい食事を取り、太陽の光を浴びて体を動かしましょう。特に、子宮内膜症の治療で偽閉経療法を繰り返し行った方、ダイエットなどで月経不順の期間があった方は骨密度が十分でない可能性があるため注意が必要です。
知識は病気予防の第一歩です。
<参照>
■渡邊由貴、妊娠後骨粗鬆症は産後6カ月以内で多発、Medical Tribune、2024年8月8日