今年から「世界糖尿病デー」の表記が世界共通の「World Diabetes Day(略称:WDD)」に変更されることになりました。11月11日から17日まで全国糖尿病週間として、各地で啓発活動が行われます。
2021年の統計によると、世界では成人の10人に1人が糖尿病であり、2045年には7億8,300万人に増加すると予測されています。日本ではこの10年間で有意な増減はみられませんが、年齢が高い層で割合が高くなっています。
漢方では、2型糖尿病の治療にタンポポがよく使われます。その抗高血糖作用、抗酸化作用、抗炎症作用により重要な抗糖尿病植物と考えられており、ポリフェノール、セスキテルペン、トリテルペン、フィトステロールなど、タンポポに含まれるさまざまな生理活性成分の生理学的影響を評価するための研究が多く行われています。
韓国の研究チームは、糖尿病ラットの肝臓抗酸化酵素活性と脂質プロファイルがタンポポ抽出物でどのように変化するかを報告しています。
雄のラットを非糖尿病、糖尿病、糖尿病でタンポポ抽出物を与える3つのグループに分けて比較したところ、タンポポ抽出物を与えた糖尿病ラットのグループで、血清グルコース濃度の低下、抗酸化酵素活性の回復、肝臓マロンジアルデヒド濃度の低下、血清と肝臓組織中の総コレステロール濃度の低下、血清HDLコレステロールの増加がみられました。これらの結果から、研究チームは、タンポポ抽出物は脂質代謝を改善し、糖尿病ラットの脂質過酸化とフリーラジカルによる糖尿病合併症の予防に効果的であると結論づけています。
私はタンポポの葉から抽出したT-1という糖鎖を長年研究しており、動物実験においてT-1が毛細血管の血流循環を改善することを確認しています。糖尿病は毛細血管にダメージを与えるので、これらがたくさん集まるところ、例えば目や腎臓などに影響が出やすいです。T-1の毛細血管血流循環促進と利水の働きは、糖尿病によって引き起こされるさまざまな不調改善に有用です。
糖尿病において、血糖値をコントロールするために治療と生活習慣の改善は必須です。病があっても患者さんがご自身らしい毎日を過ごせるよう、医療に携わるひとりとしてサポートしていきたいと考えています。
<参照>
■Soo Yeul Cho et al., Alternation of hepatic antioxidant enzyme activities and lipid profile in streptozotocin-induced diabetic rats by supplementation of dandelion water extract, Clin Chim Acta. 2002 Mar;317(1-2):109-17. doi: 10.1016/s0009-8981(01)00762-8.